EU共通農業政策(CAP)改革の内容

農業情報研究所(WAPIC)

04.5.8

 EU農相理事会は4月22日、欧州委員会が提案したタバコ、オリーブ油、ワタ、ホップの助成を根本的に見直す共通農業政策(CAP)改革に合意した。これは、昨年6月26日に合意されたアジェンダ2000改革CAPの中間見直しによる改革に次ぐものである。これにより、改革未合意の主要部門は砂糖部門だけとなった。合意された改革は今年から来年にかけて次々と実施に入る。これを機に、これまでに合意された改革の内容の総まとめをしておこうと思う。

 欧州委員会が主張するこの改革の目的は、CAPを消費者と納税者の利益に適合させると同時に農業者支援を継続し、農村経済と環境を護り、農業政策の財政的コストを安定化し・統制可能にし、WTO農業交渉においてEUの農業と社会の必要性に応えることを可能にすることにある。今次改革は、EU農民が、一層市場指向的になり、EU・世界市場で競争力を増す一方で、妥当な所得支持を受け、環境面で持続可能な農業に報償を与えられ、多様な地域的状況のなかで高品質な食品を生産し・付加価値をもたらし、EUの田園地域の特徴を維持することを助ける決定的な一歩をなすものだと言う。

 改革は次の三つの柱からなる。

 第一は、「デカップリング」である。これは、現在の農民への直接支払いの大部分を生産から切り離された「単一支払い計画」に置き換えるものである(ただし、改革交渉の過程で、各国が地域の状況に応じて生産に結び付いた直接支払いを部分的に残す余地も与えられることになった)。

 第二は農村開発政策の強化である。これは農村開発措置への[市場措置からの]一層の資金の移転や新たな農村開発措置の導入、及びその資金を担保するための比較的大規模な農場への直接支払いの減額(「モジュレーション」―後述)を通して行われる。

 第三は、CAPの市場支持に関する部分の修正である。これは、個々の作物に関する市場介入メカニズムの大幅な改革や支援メカニズムの調整と2013年まで固定された農業予算を超えないように保証する財政規律メカニズムを通して行われる。

 以下に、これらの改革の内容を要約する。

 1.デカップリング―単一支払い計画

 これは、農民への直接支払いが何を生産するかと無関係になることを意味する。支払額は、原則としては基準期間(2000-02年)に農民が受け取った直接援助を基礎に計算される。

 EU全土での土地管理活動の継続を確保するために、この直接支払いの受領者には、その土地を適正な農業・環境条件に保つことが義務付けられた。この要件を満たさない農民は直接支払いの減額に直面する(「クロス・コンプライアンス」―後述)。

 しかし、このようなデカップリングは「全面的」に、一律に適用されるわけではない。デカップリングがもたらす激変への恐れから、改革論議の過程で様々な「柔軟化」措置が生み出された。各国が採択可能な措置は多様化し、政策選択の幅は増えたが、同時に国・地域・部門による競争条件に複雑な歪みをもたらす恐れがあるし、各国も最適な政策選択をめぐって頭を悩まさねばならなくなった。

 デカップリングは原則2005年1月1日に運用に入るが、各国は2007年まで実施を延期できるとされている。

 欧州委員会は「全面」デカップリングを提案していたが、交渉の結果、農産物市場に混乱か、生産の放棄が起きる恐れがあると考える場合、各国は直接援助の一部を既存の形で維持することができることとなった(「部分デカップリング」)。ただし、各国は国または地域のレベルで多くの選択肢を適用できるが、十分に定義された条件の下で、明確な限界内においてのみとされている。

 主要耕種作物である穀物・油料種子作物・蛋白源作物(COP)については、生産関連面積支払いの25%が維持でき、あるいはその代わりとして、既存の生産関連面積支払いを維持するために、追加的デュラム小麦援助の40%までを維持できるとされた。

 現在の羊・山羊奨励金の50%は生産関連支払いとして与えることができるし、養牛部門では、各国は肉用繁殖母牛奨励金の100%まで、生産関連屠殺奨励金の40%までを維持できる。その代わりとして、屠殺奨励金の100%、またはそれに代えて特別雄牛奨励金の75%までを維持することもできる。

 ただ、酪農部門では、07年にデカップリングが完全実施されるとされた。各国は2005年からデカップリングを適用できる。酪農直接支払いは段階的に導入され、2007年までに完全実施される。一般的に、EU構成国が単一支払い計画の地域別適用内でのデカップリングの早期導入に関して決定しないかぎり、2006/07年から単一支払い計画の一部をなすことになる。

 遅れて改革が合意されたタバコ部門援助は4年の移行期間を経て完全にデカップルするとされたが、オリーブ油では40%まで、ワタでは35%までの生産関連援助が認められた。ホップでも25%までの生産関連援助の可能性が残された。

 乾燥援助、種子、海外県等の超遠隔地域とエーゲ海諸島の直接支払いは単一支払い計画に統合されるには及ばないとされた。

 [単一支払いに関する詳細規則―別掲

2.強制クロス・コンプライアンス

 農業者は援助受給のために一定の条件を満たさねばならない。これがクロス・コンプライアンスである。今まではその実施は構成国の自主性に委ねられ、援助受給の条件としては環境基準の遵守だけが適用されていた。しかし、これが強制的になり、直接支払いを受け取るすべての農民は、環境・食品安全・動物保健福祉の分野での18のヨーロッパ法定基準を守らねばならない。これらの基準を守らなけらば、直接支払いの削減を通して罰せられる。

 また、直接支払いの受領者は、土地放棄とその結果起きる環境問題を回避するために、すべての農地を適正な農業・環境条件に維持しなければならない。農民がこれを怠れば、制裁として支払い減額が適用される。

 EU構成国は、クロス・コンプライアンスの適用(すなわち、農民による違反)を通して集められた資金の25%を留保できる。

 また、構成国はその永久草地総面積が大きく減らないように保証しなければならないとも要求されている。

3.モジュレーションと財政規律

 農村開発政策の強化、追加的農村開発措置に資金を供給するために、比較的に大規模な農場への直接支払いは、05年3%、06年4%、07年以後13年まで5%減額される。一農場当たり5,000ユーロに達しない直接支払いからは減額されない。

 特定構成国内で生み出されたモジュレーション資金の20%は当該構成国に配分される。残りの額は、@農地面積、A農業雇用、B購買力平価での一人当たりGDPの明確な基準に従い、構成国間で再配分される。しかし、すべての構成国は最低でもそのモジュレーション資金の80%を受け取ることができる。

 これは、新規加盟国には、直接支払いが既存EU諸国のレベルに達するまで適用されないし、超遠隔地域及びエーゲ海諸島はモジュレーションを免除される。

 構成国は、06年以前に策定した農村開発計画への資金供給のために必要とされるレベルまでの国内モジュレーションを継続することを許される。

 「財政規律」のメカニズムは、CAPの支出を02年10月のブリュッセル欧州理事会で首脳が定めた厳格な予算シーリング内に収めるために適用されるものである。これは、CAPの関連分野の支出(市場支出と直接支払い)が策定されたシーリングから3億ユーロの安全マージンを引いた額を超えると見通されるときに、直接支払いが調整されることを意味する。直接援助に関する過剰支出が見通されるならば、直接援助は減額され、予算を超えないように保証するということだ。閣僚理事会は、欧州委員会の提案に基づき、必要な調整を毎年行う。

4.農村開発政策の強化

 5%のモジュレーションにより、農村開発資金に年12億ユーロが追加される。新たな農村開発計画の枠内で取り上げることのできる新措置に次のものが追加された。

 @食品品質改善措置

 農産物の品質、生産過程、マーケッティングと販売促進を改善するための計画に参加する農業者に提供される奨励支払いの下で、最大5年間、年間最大一人当たり1,500ユーロまでの年次支払いが提供される。品質改善計画の下で生産される製品についての情報を含む消費者情報活動を行う生産者集団のための追加公的支援も利用できるが、これは指定プロジェクトの費用の70%までに制限される。

 A基準への対応

 一時的で漸減する助成により、環境、人間・動物・植物保健、動物福祉、職業安全に関する未だ国内法化されていないEU立法に基づく強要基準への農業者の適応を助ける。援助は最大限5年間、一律のレートで払うことができ、年とともに漸減させる。年間一農場当たり援助額上限は1万ユーロとする。

 農業助言システムを利用する費用を助成するための支援が与えられる。農業者は、このようなサービスの費用の最大限80%までを受け取ることができるが、上限は1,500ユーロとする。

 なお、農業助言システムは、CAPの助成金を受け取る農場の監査システムを意味する。この監査は定期的な棚卸しを実施し、資材の流れを明らかにする農業者に関係する。農業者は、その農場で起きる、とりわけ環境、食品安全、動物福祉に関係する農場管理過程を記録することになる。農業者は生産過程で基準や適正規範をどう適用できるかについて意見を受け取ることになるから、このシステムは農業者にサービスを提供することにもなる。EU構成国は07年からシステム導入を義務付けられる。農業者の参加は、最初は任意とし、2010年に、閣僚理事会が、欧州委員会の報告に基づき、このシステムを一定の農業者に強制的なものとするかどうか決定するとされている。

 C動物福祉

 動物福祉措置は法定基準のレベルを超える約束にのみ適用するもので、法定基準は農業者自身の費用で満たさねばならない(ただし、そのような基準が新たに導入される場合には、新たな「基準適応」措置により、調整のための支援を提供できる)。自身の農場の家畜の福祉を改善する最低5年間の約束を行い、適正家畜飼養規範を超える農業者への支援を提供する。この支援は、このために生じる追加費用と所得損失と関連させ、年一頭当たり500ユーロの限界内で年々支払われる。

 なお、既存農村開発措置に関しても、青年農業者支援(自立=経営創設援助の増額と投資援助の援助率の引き上げ)、Natura2000(小鳥及びハビタット指令)実施のための支援、森林措置(国有林における投資の生態的・社会的理由による支援、私的保有者への年次奨励金支払い)に関する強化が図られた。

5.価格支持・直接援助に関す主な決定

 ・穀物:介入価格とトン当たり63ユーロの直接支払いは据え置き。ただし、季節調整のための収穫後月次加算は50%削減。ライ麦については介入システムから除外するが、ライ麦生産が非常に重要な意味を持つ構成国は、農村開発措置の枠内でライ麦生産地域を支援するために、モジュレーションで得られる資金を10%余分に受け取ることができる。

 ・蛋白源作物:現在の蛋白源作物追加援助(トン当たり9.5ユーロ)は維持し、ヘクタール当たり55.57ユーロの作物特定面積支払いに転換する。これは、140万haの新たな最大限保証面積の限界内で支払われる。

 ・デュラム小麦:伝統生産区域におけるデュラム小麦追加支払いは生産と無関係に支払われる。構成国は40%までを生産に関連させることができる。これはヘクタール当たりで04年313ユーロ、05年291ユーロ、06年年からは285ユーロと定められ、単一支払い計画に含まれる。現在ヘクタール当たり139.5ユーロと定められているその他のデュラム小麦支持地域の特別援助は、段階的に廃止される。この削減は04年にスタート、3年間で実施される(04年93ユーロ、05年46ユーロ、以後はゼロ)。04/05年からは、一定の基準に基づき、トン当たり40ユーロの特別奨励金が導入される。

 ・スターチポテト:スターチトン当たり110.54ユーロの既存の支払いの40%が、スターチ産業への引渡しの歴史的実績に基づき、単一支払い計画に統合される。残りは、スターチポテトの作物特定支払いとして維持される。最低価格とスターチの生産払戻し金は維持される。

 ・乾草:援助は栽培者と加工産業の間で配分される。栽培者への直接援助は、産業への引渡の歴史的実績に基づき、単一支払い計画に統合される。国別上限は現在の国家保証量を考慮に入れる。加工援助は、04/05年につきトン当たり33ユーロと定められる。

 ・エネルギー作物:エネルギー作物を生産する農業者にヘクタール当たり45ユーロの援助が提供される。EU全体で150万haの最大限保証面積に適用される。農業者は、そのエネルギー作物生産が農業者と関係加工産業の契約でカバーされるならば、援助受け取りの資格が認められる。当該農場で加工される場合には、この契約は必要ない。

 ・コメ:介入価格は50%削減してトン当たり150ユーロに。介入は年7万5千トンに制限。生産者の所得を安定させるために、現在の直接援助はトン当たり52ユーロから177ユーロに増額。このうちトン当たり102ユーロは、単一支払い計画の一部となり、現在の最大限保証面積に限定された歴史的権利に基づいて支払われる。

 ・ナッツ:現在のシステムは、アーモンド・ヘーゼルナッツ・クルミ・ピスタチオ・イナゴマメの固定国家保証面積に分割された80万haにつき、ヘクタール当たり120.75ユーロの年次一律レートの支払いに置き換えられる。構成国は保証量を柔軟に利用することができる。

 ・酪農:バター介入価格は25%削減される(04、05、06年に7%ずつ、07年に4%)。脱脂粉乳については、15%削減する(04年年から06年年までの3段階で)。バターの介入買入れ限度数量は、04年には7万トンとし、以後年々1万トンずつ削減、07年からは3万トンとする。この上限を超えるものについては、買入れは入札によってのみ行われる。牛乳の目標価格は廃止される。補償(単一支払い計画の一部をなす)は、トン当たり04年11.81ユーロ、05年23.65ユーロ、06年以後35.5ユーロとする。酪農民に安定した展望を与えるために、生産割当システムを2014/15年まで延長。一般的割当増加は2006年から実施。

 新たに合意された以下の部門については、やや詳しく記す。

 ・タバコ:従来の生産関連直接援助制度―品質に基づいて調整され、品種ごとの生産割当に従う生産量に関連させた奨励金支給システムによる生産者助成―を完全にデカップルする。これは2006年にスタート、4年間の移行期間の間に漸次実行する。この4年の間に、タバコ奨励金の最低40%までを単一農場支払いに組み込まねばならない。この間、EU構成国は60%までを生産関連援助として維持できる。この生産関連援助は、EU地域政策において最貧地域に分類される「目標1地域」の生産者か、一定の品質の品種を生産する生産者のために保存することができる。4年の移行期間の後、2010年からは、直接援助はすべて生産から切り離される。その50%は単一農場支払いに移転させ、残り50%は農村開発政策の下での構造再編計画のために利用されることになる。[貧しい地域に多いタバコ生産者が転換を余儀なくされるだろう]。

 ・オリーブ油:基準期間(2000-02年)の間の現在の平均生産関連支払い(EU全体で年23億ユーロ)の最低60%が0.3ha以上の農場に関する単一農場支払い計画の下での援助受給権に転換される。各オリーブ農民の受給額の計算のための基準期間には2000-03年が含まれる。0.3ha未満のオリーブ農場への支払いは06年から完全にデカップルされる。

 各国は、残り40%の援助を、生産者に追加オリーブ園支払いを与えるための国家予算として維持できる。この支払いは、簡素化のために、50ユーロを下回る援助請求には配分されない。

 各国はオリーブ油予算の10%までを品質改善措置に利用できる。

 市場バランスが崩れるのを避けるために、単一農場支払いへのアクセスは、98年5月1日以前の既存オリーブ栽培地域と、欧州委員会の承認する計画の下でなされる新規植栽に限定される。ポルトガル及びフランスでの新規植栽に与えられる助成額を斟酌、フランスについては100万ユーロ、ポルトガルについては1千900万ユーロが追加される。

 現行制度は2004/05年市場年度まで適用を続ける。

 ・ワタ:予算の65%がデカップル所得援助に利用できるようにする。35%はワタ面積に応じた生産者援助に向けられる。新たな面積支払いは、最大限45万5千360ha(ギリシャ:37万ha、スペイン:8万5千ha:ポルトガル:360ha)の面積に与えられる。援助対象地域の面積がこの最大限を超える場合には、それに応じて単位面積当たり援助を減額する。

 ギリシャについては対象地域を二分、ヘクタール当たり援助額を最初の30万haについては584.1ユーロ、残り7万haについては342.85ユーロとする。

 ワタの面積に応じた援助は、他の生産者直接援助と同様、クロス・コンプライアンス、モジュレーション、財政規律などの一般的義務に従わねばならない。

 改革によるワタ作部門の一定の再編は不可避なために、農村開発計画の下でのワタ生産地域の再編計画のための予算額を配分する。欧州委員会はワタ助成と改革のワタ生産・貿易への影響を監視するメカニズムを策定、09年末までに結果を報告する。

 ・ホップ:デカップル単一支払い計画に統合。ただし、生産地域における特別な生産条件や特別な状況を考慮、最大限25%までの農業者または生産者組織援助の可能性も残す。

 

単一支払いに関する詳細規則

支払い受給権

 新たな支払いの受給権は土地を現に農業利用している農業者に与えられる。一般的には、これは新たな計画が実施されるときに活動しており、基準期間中の実績を証明できる農業者を意味する。農業者は、過去の実績(2000-02年に受け取った援助の額)に基づく支払い受給権を与えられる。各受給権は、基準年にこの額を生じさせた面積(飼料面積を含む)で基準額を割ることにより計算される。

 与えられた年の支払いは、農業者がその保有する支払い対象指定面積分の受給権についてのみ行われる。従って、全額支払いを受けるためには、受給権を持つのと同じ指定面積を保有していなければならない。指定面積には、永年作物栽培のために利用される土地を除くすべてのタイプの農地が含まれる。農業者が単一支払い計画からの支払いを申請する指定面積は、野菜、果実、及びテーブル・ポテトを除くすべての農業活動のために利用することができる。

 支払い受給権は、土地を伴い、あるいは伴わず、同一国内の農業者間で譲渡できる。構成国は受給権が地域を超えては譲渡できない地域を定めることができる。土地を伴わない譲渡は許されるが、受給権を取得する農業者は、受給権が適切な指定面積に合致する場合にのみ支払いを受け取ることができる。

 従って、受給権は指定面積に関連した土地が存在する場合にのみ利用することができる。さらに、農業者は、他の必要な条件、とくに土地を適正な農業・環境条件に維持するという条件を遵守しなければならない。

 牛フィードロットや移動牧畜のような農民が土地を保有しないか、僅かしか保有しない場合には、これらを対象とする特別な取り決めが適用される。

 3年間利用されないままの受給権は、移行期間に生じる困難なケースや問題の解決や新規参入者への受給権授与を目的に、新計画発足時に創設される国家予備に移転される。国家予備は基準額の定率減額を通して設立され、その上限は、単一支払い計画のための国家予算額の3%である。

 単一支払い計画の地域的実施

 しかし、単一支払い計画は、構成国の「地域」的実施による柔軟化の可能性も与えれられている(支払い対象指定面積が300ha未満の国は一地域を構成する)。構成国は国内をいくつかの地域に分割、地域に配分される予算の全体または一部を前記の受給資格を持たない者(基準期間中に援助を受給の実績がない者)も含む地域の全農業者に配分することができる。この場合、農業者は、地域予算全体またはその一部を地域の対応する指定面積で割ることにより単価が計算される画一的受給権を配分されることになる。例えば英国は、イングランドを「高地の厳しく条件不利な地域(SDA)を含む土地」、「高地のSDA内の荒地」、「SDA以外のすべての土地」の三地域に分割、これら地域内でのフラット・レートの支払いを計画している。また、この「地域化」の枠内で、(2000年12月31日時点で確認された)耕地と草地の間で支払いレベルを差別化することや、牛乳奨励金の全部または一部をの単一支払い計画への統合を05年から前倒し実施することもできるとされた。

 国家予備

 構成国は基準額の定率減額を通して国家予備を創設する。この減額は3%まで行うことができる。国家予備は困難なケースのための(例:不可抗力または例外的状況の場合の)基準額を提供するために使われる。とくに移行期間の間、多数の個別農場の状況が考慮されねばならない。

 それに加え、国家予備は移行の問題を解決するために使われる。これは特に、基準期間の間に土地を賃借りするか購入し、新たな設備に投資し、あるいは国家転換計画に参加したために、その生産能力に比べて基準額が低い農業者に適用される。

 セット・アサイド(休耕)

 単一支払い計画の枠内で、農業者は過去の実績に基づいて計算されるセット・アサイド支払い受給権を受け取る。セット・アサイド受給権は、これがセット・アサイドされる指定面積(永年牧草地は除く)に関連するかぎりで与えられる。セット・アサイド土地は輪作地に含めることができ、またエネルギー作物生産のために利用することができる。有機生産者はセット・アサイドの義務を免れる。

 セット・アサイド面積は少なくとも0.1haをカバーし、少なくとも10mの幅がなければならない。正当な環境上の理由があれば、5mの幅も受け入れることができる。

 主要資料
 
Council Regulation (EC) No.1782/2003(直接支払い)
 Council Regulation (EC) No.1783/2003(農村開発)
 Council Regulation (EC) No.1784/2003(穀物),1785/2003(米),1786/2003(乾草),1787/2003,1788/2003(牛乳)
 
Newsletter:special edition(03.7)
 CAP reform continued: EU agrees on more competitive and trade-friendly tobacco, olive, cotton and hops regimes04.4.22

 関連情報
 
英国:改革CAPの下での農業者助成計画,04.2.16
 
フランス、06年からCAP改革実施を決定、農民は破滅的影響と反発,04.2.20
 
欧州議会、公正な農家所得安定策―競争力と多面的機能を両立させるCAPを要請,04.2.10
 
EU共通農業政策(CAP)改革の内容,03.6.27
 
CAP改革交渉が妥結、WTO交渉の弾みとなる?,03.6.26
 EU共通農業政策改革案に関する欧州委員会メモランダム,03.2.6-7
 

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