欧州委 穀物価格高騰で輸入関税停止と豚肉輸出補助金導入を提案

農業情報研究所(WAPIC)

07.11.28

 欧州委員会が11月26日、08年6月30日に終わる2007・08穀物販売年度の間、オート麦を除くすべての穀物の輸入関税の停止を提案した。同時に、豚肉輸出払い戻し金(補助金)を再導入するとも発表した。

 Commission proposes suspension of import duties on most cereals,EC,11.26
  Commission proposes introduction of export refunds for fresh pig meat,EC,11.26

 輸入関税停止は、2年続きの不作で引き起こされた食料品価格の高騰を抑えるためだ。欧州委員会によると、2007/08年のEU穀物生産は、悪天候のために、既に低下していた2006/07年度の生産をさらに3.5%(1000万トン)下回る2億5600万トンに落ち込むと推定される。今年度初め(7月)の民間及び公的な総在庫は、既に前年度同期の在庫レベルを下回る1320万トンに落ちていたが、この不作で、在庫レベルは大きく下がる。その結果、EUは2006/07年よりも輸入を増やす必要が生じた。従来は穀物純輸出国であったEUは、07年7月以来11月20日までに520万トンの穀物純輸入国に転じたという。

 これを受け、EU穀物価格は、2007/08年度のスタート以来、急騰した。フランス・ルーアンの製粉小麦価格は、年度スタート時の179€/トンから9月初めには300€/トンにまで上がった。ドイツの製パン用小麦の販売価格は、8月半ばまで、前年を70%上回っていた。小麦価格上昇を受け、飼料用大麦の価格も上昇した。フランス市場では、9月末のルーアンの飼料用大麦が270€/トンにつけ、2006年夏の倍にまでなった。大麦価格の高騰が飼料用トウモロコシの需要に火をつけた。バヨンヌのトウモロコシ価格は7月2日の183€/トンから9月半ばには255€/トンにまで上がった。

 フィッシャー・ボエル農業担当委員は、「私は、この提案がEU外からの穀物輸入を容易にし、ヨーロッパ穀物市場の緊張を和らげることを希望する」と言う。彼女によれば、「穀物の国境保護は比較的低いが、EU市場のバランスを確保するために不可欠な一定の穀物には、なお輸入関税が適用されている」。

 委員会は、この提案が12月18日のEU27ヵ国閣僚会合で承認されることを期待している。この提案は11月26日の閣僚会合でも話題になったが、多くの閣僚は肯定的だった。ただ、一部閣僚は、市場の変化に大きな注意を払うべきと要請したという。

 http://www.consilium.europa.eu/ueDocs/cms_Data/docs/pressData/en/agricult/97269.pdf

 他方、豚肉輸出補助金の導入は、EU豚肉業界が、飼料価格高騰とドル安で、米国・カナダ・ブラジルなどに対して著しく不利な競争を強いられていることに配慮したものだ。

 欧州委員会によると、とりわけ飼料コスト上昇から生じたEU豚肉部門の困難な状況を受け、10月29日から民間保管スキームが設置され、スペイン、イタリア、デンマーク、ドイツからの8万5000トンの保管要求に応えてきた。これで豚肉価格は安定したように見えるが、高いコストのためにマージンは2002−2006年平均の65−70%に低下している。また、ドルの急落も、米国、カナダ、ブラジルなどを主要競争相手とするEU輸出業者の競争力を大きく削いでいる。民間保管措置だけでは、ヨーロッパ豚肉生産者が直面する困難を和らげるには不十分に見えるという。

 ボエル委員は20日、CAPの”ヘルスチェック”で輸出補助金の段階的廃止を強調したばかりだ(欧州委のCAP健診 大農場援助削減 気候変動等新課題で農村開発予算大幅増,07.11.22
)。