英国養豚業者 豚肉価格引き上げを求めロンドンで集会 標的はウォルマート

農業情報研究所(WAPIC)

08.3.4

  イギリスの500人の養豚業者が今日、豚肉・豚肉製品の小売価格引き上げを求め、とりわけウォルマート系列スーパー・アスダを標的にロンドンで集会を開く。

 NPA,LONDON RALLY, March 4,08.3.3
 http://www.npa-uk.org.uk/news.htm

 この集会を組織した全国養豚協会(NPA)によると、飼料価格はこの数ヵ月で倍にもなった。現在の生産者手取り価格では、1頭を育て上げると平均で26£(約5,300円)の損が出る。このままではイギリスから養豚が消えてしまうと仕入れ価格の引き上げを要求、多くの小売業者も同情しているが、行動に踏み切れない。ウォルマートが頑として拒み、安売りを続けているためだ。

 NPAは当所、集会参加者はせいぜい20-50人と見ていたが、今や500人にも膨れ上がった。これで生活を乱されるロンドン市民の多くも、彼らの主張に耳を傾け、応援するだろうという。

 最近の消費者調査によると、豚肉・鶏肉購入者の78%が、上昇する生産コストをカバーし、英国農業者を支援するために、価格引き上げに応じる用意があると答えている。大手小売業が農業者に正当に支払っていると思う者は9%しかいない。91%の人々は、英国が強力な農業部門を保持することが重要と考えている。NPAの輸入報告は、英国は高度の法的動物福祉基準を持つから、豚肉輸入の70%は違法だと言う。

 ともあれ、飼料価格高騰と豚肉価格の低迷に苦しむのはイギリス養豚業者だけではない。ヨーロッパ中が養豚危機に陥っている。EU27ヵ国のすべてで豚の数が減っており、特にリトアニア、スロベニア、ブルガリア、チェコ、ポーランド、ハンガリーなど、中東欧での減少が激しい。

 今年の繁殖雌豚と畜数はイギリスで40%も増え、オランダ、ドイツ、デンマークと合わせると、過去3ヵ月で3万頭にまで及ぶ。デンマークの最も効率的な生産者の中にも、ヨーロッパ最大の豚肉(協同組合)企業・ダニッシュクラウンとの契約を破棄する者が現われている。現在の組合価格で生き残ることができないからだ。

 それにもかかわらず、豚肉不足に市場が反応するまで、生産者への支払額が増えるメカニズムは存在しない。その結成以来、NPAは持続可能な契約システムを作ろうとしてきたが、世界中から供給される豚肉が不足にならないかぎり、小売業者はこんな契約を結ぼうとしない。

 NPAは消費者にかける。消費者がイギリス産にこだわるならば、イギリス産の価格が持続可能なレベルまで上がるだろう。今日の集会で、将来が消費者の手に握られていることを示さねばならないと言う。


 もっとも、そうなれば、スーパーにも次の手がある。産地を偽装、虐待動物の肉を福祉基準を満たした動物の肉と偽装、どこまでも安売り競争を続けるだろう。国産愛用で窮地から脱出できるという考えも、まだ甘い。

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