農業情報研究所農業・農村・食料欧州ニュース:12年1月26日

EU欧州議会 食品廃棄物半減を 食品大量浪費は倫理的・経済的・環境的に許されない

 EUの欧州議会が1月19日、現在は年一人あたり179kgにのぼる食品廃棄物を2025年までに半減させ・同時に食品廃棄物の発生を避けるための具体的行動を練り上げるように欧州委員会とEU諸国に要請する決議を採択した。

 Press release - Parliament calls for urgent measures to halve food wastage in the EU [European Parliament],12.1.19

 食料品チェーンの各段階―生産、加工、小売、配膳(料理提供)、消費―で発生する廃棄物は、現在、安全で食用に適する食料品の半分ほど、各年8,900万トンと推定される。欧州委員会によれば、その42%が家庭(60%は回避できる)、39%が製造部門、5%が小売部門、14%が配膳部門から出る。このまま放置すると、2020年の廃棄物総量は1万2,600万トンに達すると見込まれる。

 欧州議会は、供給を上回る食品需要の増大への挑戦が将来の最も重要な問題となっているときに、完全に食べられる食品を棄てている余裕はないと言う*。決議によれば、食料を援助に依存する1,600万のヨーロッパ市民のためだけではなく、食料・栄養不足に脅かされている世界の9億2,500万にのぼる人々のためにも、こんなことは”倫理的”に許されない、さらに、消費されない食べものの山は地球温暖化の一因もなしているのだから、食品廃棄物の削減は経済的にも、環境面からしても至上命令だ。

 こうして、欧州議会は、EUレベルと各国レベルのさまざまな措置を結合する協調戦略によって食料品チェーン各段階での食品のロスを減らすべきだと言う。提案される措置は次のようなものだ。

 ・過剰な廃棄を避けるための啓発

 食品廃棄をいかにして回避するかを公衆に知らせる新たな啓発活動をEUおよび各国のレベルで展開する。各国は、食品をいかに貯蔵し・調理し・処分するかを説明する授業を学校の教科に組み入れるべきである。食品を持続可能な方法で利用するアイデアを促進するために、2014年を”ヨーロッパ反食品廃棄年”とする。

 ・表示と包装の適正化

 小売業者が消費期限切れが近い食品を提供し・従って廃棄の可能性が増える状況を回避するために、食品の販売がいつまで可能か、食品の消費がいつまで可能かを示す二重の日付表示を導入する。

 それにもかかわらず、欧州委員会と各国は、EU域内で現在使用されている賞味期限や安全(消費)期限のような表示の違いを消費者に理解させることを第一に考えねばならない。

 消費者が必要なだけの量を買えるように、食品保存の改善も考えたさまざまなサイズの包装が提供されるべきである。消費期限が近い食品や傷物食品は、これを必要とする人の手が届くように、値引き販売されるべきである。

 ・公共機関は責任ある配膳業者を優遇すべきである。

 配膳やもてなしの公共調達ルールは、可能なところでは、地元産品を使用し、売れ残り食品は処分するのではなく・貧しい人びとや無料フードバンクに配る配膳業者との契約を保証するように改めるべきである。

 最も恵まれない市民に食品を配るEUレベルの支援措置、あるいは学校で果物や牛乳の消費を奨励する措置も、食品廃棄を防ぐ観点から再評価されるべきである。

 欧州議会は、売れ残った食品を回収して必要とする人に提供する一部EU諸国の既存のイニシアティブを歓迎すると言う。 

 *折しも、本日付のフィナンシャル・タイムズ紙社説は、”90億人を養う”と題し、将来の地球の90億人の食料安全保保障のためには、農業生産性改善のための投資の復活だけではなく、収穫後の大量のロスを減らすための多くの途上国における生産物輸送・貯蔵のためのインフラの整備が不可欠と強調している。

 Feeding the 9bn Bumper crops do not ease urgency of food security,FT.com,1.26