農業情報研究所>農業・農村・食料>欧州>ニュース:13年9月9日
家族農業の持続可能性をいかに強化するか EU農相が非公式特別会合
昨日9月8日から10日まで、リトアニアの首都ヴィリニュスに集まったEU各国農相が、グローバル化の中での家族農業の将来について論議を交わす。会合は、国連総会が”国際家族農業年”とすると宣言した2014年に社会・農民団体が主催する一層の討議の堅固な基盤を提供するという。
会合に先立つEU理事会議長国(リトアニア)の報道発表によると、リトアニア農相は、「家族農業は、競争に耐え・持続可能で・市場指向的な、社会の期待に応えるヨーロッパ農業モデルの基礎をなす。家族農業の開発はあらゆる強力なコミュニティが重点を置き、農民自身が公共財の提供で不可欠な役割を演じている」と指摘する。
家族農業はすべてのEU諸国で最も一般的な農業にとどまっている。ただ、家族農場の数は過去数十年、大部分のEU諸国で減ってきた。これは生産性上昇と農業・食料部門の競争圧力が引き起こしたものである。
農相によれば、「不幸にも、高度に競争的でグローバルなビジネス環境の中で、家族農業は、限定された市場へのアクセス、食料チェーンで付加される価値の農民のシェアの減少、限定された交渉力など、多くの困難に直面している。競争に耐え続けるために、農場は大規模化し、その能力と柔軟性を高める傾向があるが、それは家族農業の価値、地方・地域の経済発展に悪影響を与える場合が多い」。
このような家族農業の重要性とそれが直面する困難を顧み、特に家族農場を糾合する協同組合と生産者組織の発展を支援する環境を創りだすためにEU、各国、地域レベルの政策がどのように、またどの程度まで家族農業の持続可能性を強化できるかを議論する非公式閣僚会合を招集した。
閣僚は、家族農業の革新、ローカルな食料市場の促進、家族農業の伝統の社会的重要性、農村の活力、コミュニティや地方のグループの活動について意見を交換した後、家族農業の伝統と近代的食品加工の好例である有機家畜農場を訪問するという。
EU Agriculture Ministers’ discussions to focus on future of family farming,European Commission,13.9.7
日本では、家族農業は「社会の期待に応える」どころか、日本経済発展の足を縛る「社会の敵」だとまで言いふらす論調がある。家族農業の基盤をなす小規模保有農地を取り上げ、効率的な「担い手」(農村社会の生き身の人ではなく、単なる農業生産手段 、道具にすぎない)、果ては「企業」に引き渡せという議論までが勢いを増している。「国際家族農業年」という言葉など聞いたこともない人も多いだろう。かくて、家族農業、それが提供してきた市場によって報われない「公共財」 (環境、景観、人口維持、雇用維持・創出、農村コミュニティの活性維持、伝統的田園生活、文化遺産保全・・・)は消滅への道を辿ることになる。ヨーロッパは、それがもたらす取り返しがつかない巨大な損失に気づいている。日本の政府・与党が追求するのは、金銭的「所得倍増」だけである。
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