農業情報研究所>農業・農村・食料>欧州>ニュース:18年9月12日 イギリス農業者援助 EU型面積支払から環境支払へ 改革CAPの先へ
フィナンシャル・タイムズ紙が伝えるところによると、イギリス政府は2021年から7年をかけ、国の農家への資金供給制度を、農地の規模に基づく現在のEU直接支払=「基礎支払」*から環境便益に応じて支払う“環境土地管理スキーム”に置き換える。支払を減額すると同時に、これを農家が提供する環境その他の“公共財”と一層緊密に結びつけるという。 UK to replace EU farm payouts with transition scheme,FT.com,18.9.12
新たなスキームの下では、農家(農場)への支払は、とりわけ大気質・水質、野生生物のハビタットの改善、気候変動防止、歴史的特徴の保護などに基づく。清浄な空気、野生生物ハビタットの保護などの非金銭的成果を金銭的価値で評価するわけだ。
Gove環境相は、現在のEU共通農業政策(CAP)は非効率的で、大規模土地所有者に有利なようにねじ曲がられている、10%の受給者がEU資金の半分を受け取る一方、20%の小規模農家はたった2%しか受け取っていないと言う。環境・食料・農村省(Defra)は、農民が提供する公共財の価値を評価するための方法の詳細は未だ提供できていないが、これは2025年までの新たなスキーム開発・試験を経て策定される。2019-20年の直接支払は現在と同じ基準でなされるが、2021年から2027年の支払は農場の土地面積規模と切り離される。年15万ポンド以上の所得がある大規模農場への支払は小規模農場より大幅にカットされる。
環境相言うに、イギリスのEU離脱は、“煩瑣で古臭い”ルール“からの解放の機会を与え、イギリス政府が環境を保護する農家に報いることを可能にする、と言う。
イギリスは、フランスやドイツの大規模農家の抵抗でEUがなし得なかった改革**に向けて大きく踏み出すことになる。ただし、それがイギリスの農業・食料経済にどう影響するか、今後の推移を見守るほかない。
参考図 *EU 共通農業政策(CAP)改革が最終合意 日本農政の盲点を知る,13.10.29
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農業成長産業化という妄想――「安倍農政」が「ヨーロッパ型」農業から学ぶべきことと
世界 2016年9月号 206頁を参照。 |