農業情報研究所農業・農村・食料欧州>ニュース:201021

 

EU CAP改革にむけた議論開始 めざすは欧州グリーンディールへの貢献

 

今週、EU次期(2021-27年)共通農業政策(CAP)に関する加盟国間及び欧州議会の議論が始まった。欧州委員会の提案は、CAPが引き続き欧州農業に対する強力な支援を提供し、農村地域の繁栄と高品質の食品の生産を可能にすると同時に、CAPが温室効果ガス排出を2050年までに実質ゼロにするといったヨーロッパ経済を持続可能なものにする“グリーンディール”、とりわけ一層健全で持続可能なフードシステムの構築と生物多様性戦略に貢献することをめざしている。

 

要するに、農業を、経済的困難に陥れることなく、現代社会が求める環境及び気候変動問題への挑戦に適合させようというのである。

 

 202127年のCAP総予算は既に決まっている(約3860億ユーロ)。論議の最大の焦点は、このうちのどれほどを環境保全に貢献する農業者への報償に割り当てるかにある。

 

 現在のEU議長国・ドイツは、農業者へ直接支払(CAPの第一の柱)の20%をこれに当てることを提案している。ただ、これは30%まで増やすべきという欧州議会会派もあれば、40%を主張するNGOもある。環境プログラム参加農家が少ない中東欧諸国は受け取るEU資金が減ると反発している。

 

奨励すべき農業のやり方をめぐる議論もある(農薬・肥料使用削減、有機農業、植物による周年土地カバー・・・)。

 

The Commission’s proposals,European Commission

Réforme de la PAC : les ministres de l’agriculture de l’UE trouvent un accord,Le Monde,20.10.21

Négociations tendues autour de la nouvelle politique agricole commune européenne,Le Monde,20.10.20

Les défis de la nouvelle Politique agricole commune,Agri Mutuel,20.10.20

 

 議論がどう決着するか未だ分らないが、CAP “グリーン化”は一直線には進まないだろう。“アグロエコロジー”を標榜し、ミツバチ保護のために5種のネオニコチノイドを禁止したフランスも(短報 フランス 9月1日から5種のネオニコチノイド使用を禁止 農業情報研究所 18.8.2)、それでは立ち行かないと訴える農家の声に押され、甜菜栽培に限って使用を認めようとしている(Néonicotinoïdes : la réautorisation annoncée de ces insecticides neurotoxiques sur la betterave ravive la polémique,Le Monde,20.9.2)。ただ、「日本の農政改革との対照」はますます際立つことになるだろう。