農業情報研究所>農業・農村・食料>欧州>ニュース:20年10月24日
欧州議会 CAP改革に関する立場を採択 直接支払の30%は環境尊重農家に
EUの欧州議会(EUの政策決定の一翼を担う)が23日(金曜日)、次期(2021-27年)共通農業政策(CAP)に関する立場を明らかにする三つの報告を、様々異論がある中、多数決で採択した。示された立場は先の閣僚理事会(決定機関)の合意(EU農相 CAP改革に合意 環境保護に一歩前進も援助の大半はファクトリーファームに 農業情報研究所 20.10.22)と微妙に異なる。今後、理事会は再交渉、2023年から適用される規則(法律)について2021年初までに決着させねばならない。
欧州議会の立場は次の通り。
先ず、環境プログラムに参加する農業者に奨励金を与える“エコレジーム”を各国の義務とする点では理事会と同じだが、各国は面積に応じて支払われる農業者への直接支払(基礎支払)の少なくとも30%(閣僚理事会は20%で合意)をこれに当てねばならない。
さらに、農業者への直接支払とは異なる農村開発(地域開発・CAPの第二の柱)のための予算の少なくとも35%を環境と気候に関連した措置に振り向けねばならない。
環境に悪影響を及ぼす大規模経営に対する直接支払を減らし、小規模経営保護のためにも、年6万ユーロ(約750万円)以上の直接支払を漸減させ、その上限を10万ユーロと定める。
最後に、各国はEU資金の一部を、EUの環境及び気候に関する約束を尊重する限りで、CAPから自立した独自の農業政策に充当できる(共通農業政策の“再国家化”)。
閣僚理事会に比べればCAPの“グリーン化”に向けて一歩進んでいる。ただ、多くの環境NGOや欧州議会議員の評判は極めて悪い。
一部議員は破局的だ、農業に関わる希求にも、環境に関わる希求にも応えていない。2020年、共通政策は瓦解(再国家化)、CAPは記憶の中に残るのみとなる、環境に優しい農業を希求するCAPの歩みも台無しだと言う。
環境NGOは、この改革はEUの”グリーンディール“、とりわけEUの2030年までの農薬使用半減戦略と両立しない非難する。
Press release - A
greener, fairer, and more robust EU farm policy,European Prliament,20.10.24
Après
des négociations tendues, les eurodéputés adoptent la nouvelle politique agricole commune,Le Monde,20.10.24
それにしても、大機規模化・効率化しか識らず、環境保護、気候変動など論議の対象にもならないわが国の農政論議を思うとき、EUの農政論議は日本の農政論議にも貴重な示唆をを与える―ひたすら大規模化で自壊に向かって突き進む日本農業・農村をどうしたら救い出すことができるのか?
なお、欧州議会はこの論議の中で、肉を含まない食品が肉製品と関連した名称を名乗るこを禁じる動議を否決した。ただし、乳を含まない製品はミルク、チーズを連想させる名称を避けねばならないという(