干ばつで飢餓寸前のエチオピア農牧民 FAOが緊急支援を要請

農業情報研究所(WAPIC)

06.2.16

 国連食糧農業機関(FAO)が15日、厳しい干ばつに襲われているエチオピア南東部の農民と養畜民が飢餓寸前の食料不足に直面していると、緊急家畜・農業援助を要請した。一部地域では家畜の健康が悪化、死亡するケースもあり、人々と家畜の移住が広がっている。さらにエチオピア国境にまで迫った高病原性鳥インフルエンザがこの状況に追い討ちをかける恐れも強まっているという。

 FAO:Drought-Affected Farmers And Pastoralists in Southeastern Ethiopia Face Crisis,,2.15
 http://www.fao.org/newsroom/en/news/2006/1000232/index.html

 FAOは、特に厳しい状況に置かれたソマリ州、オロミヤ州の干ばつの影響を緩和し、牧畜民の生計を救うために、1850万ドル(約22億円)の援助を要請している。これら地域では、昨年秋の雨季に降水がなかったためにもたらされた状況が、同様に厳しい干ばつに襲われているケニヤ北東部やソマリア南西部からの大量の家畜の流入によって一層悪化している。ケニアからの別の情報によれば、ナイロビ南方のカジアド地域の家畜の半分近くが死んだ。干ばつ前には50万の牛と130万の羊・山羊がいたが、今はその40%が死んだという。

 Nearly Half of All Livestock Die,Nation via allafrica.com, 2.14
   http://allafrica.com/stories/200602131261.html
  

 FAOによれば、ソマリ州だけでも100万人以上と推定される人々が飢えを凌ぐための緊急援助を必要としており、1月から3月までの乾季の始まりで、状況は一層悪化すると予想される。FAOのアンヌ・バウアー緊急事業・再建部長は、「最悪の罹災地域での打ち続く干ばつは、多くの家庭の資産を底を突くまでに蝕んでいる。既に憂慮すべき状況がさらに悪化する前に、広範な緊急介入が可能な限り迅速になされることが必要だ」と言う。

 FAOが求めているのは、第一に家族の家畜資産を救うための緊急家畜保健介入を支援するための資金だ。この介入には、ワクチン、薬、設備の供給とワクチン接種・キャンペーン支援のための技術・財政支援が含まれる。さらに、干ばつからの回復後の家庭に不可欠な繁殖用家畜の命を救うための家畜飼料の供給も緊急に必要だ。FAOは、動物のサーベイの実施や市場の監視、的を絞った家畜減らし、最貧家庭への食肉・動物製品供給のための支援も提供するという。

 第二に、極貧農民が利用できる種子を提供せねばならない。FAOは、70万近くの家族への1万4000トンの作物種子の供給を要請している。始まったばかりの播種季のために、6000トンの緊急援助が必要だ。気候関連災害やその他のショックに対する農民の脆さを軽減し、食料安全保障を改善するために、干ばつ・病害虫耐性品種の増殖も支援する。

 植物生産には水が不可欠だが、多くの小規模灌漑システムは貧弱な成果しかあげておらず、構造的な損害と貧弱な水管理慣行のために環境への悪影響もたびたび引き起こされている。そのために、FAOは選別された灌漑計画における水路や関連構造物の維持を支援し、罹災農民や地方当局と共に水管理技術の改善に努める。

 その上、エチオピア国境に達しつつある高病原性鳥インフルエンザの脅威が深刻な懸念を呼び起こしており、国へのウィルス侵入をいち早く発見し、もし侵入した場合には拡散を最小限にとどめるためのあらゆるレベルでの備えが必要になっている。そのために、FAOは政府と協力して、サーベイランス・監視能力を強化し、現場や試験所の病気診断スタッフの訓練を支援する。

 しかし、干ばつはエチオピアだけでなく、ケニア、ソマリアの一部地域にも深刻な影響を及ぼしている。従って、FAOは、アンバランスな人道援助によって生み出される人口移動による危機の重大化を防ぐために、これら3ヵ国すべての罹災地域の牧畜民・農民の必要性に同時に応える努力も行っているという。

 干ばつがもたらしたアフリカの危機的状況については、これまでにも無数の情報が伝えれられ、FAO、国連世界食糧計画(WFP)など多くの国際機関が緊急の支援を要請してきた。しかし、日本を含めた国際社会の関心はあまりに薄かった。ここで敢えて注意を喚起することにした。遺伝子組み換え(GM)作物がアフリカを飢餓と貧困から救うなどという声高の叫びなどは、商業主義に凝り固まった身勝手な主張にすぎない。現に危機的状況に直面しているアフリカの人々には何の救いにもならない。

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