食料危機の最中のケニア 干ばつ耐性GM作物の導入は少なくとも10年後

農業情報研究所(WAPIC)

06.2.3

 ケニア紙の報道によると、干ばつ耐性種子の開発に携わる米国遺伝子工学者が、ケニアは少なくとも8年から10年、このような”ミラクルな作物”の恩恵に浴することを期待できないと発言した。

 Drought-resistant GM seeds won't benefit Kenyans for the next decade,The East African,1.31
  http://www.nationmedia.com/eastafrican/current/News/news300120065.htm

  モンサント社のスポークスマンは 、米国では干ばつ耐性のトウモロコシその他の遺伝子組み換え(GM)作物は2010年ころまで栽培でるようにならない。他の国での栽培はこれより遅れるが、ケニヤはバイテク規制制度を設けようとしているから、アフリカで最初の導入国になる可能性があると言う。

 モンサントの国際開発パートナーシップ副会長のロバート・ホーシュ氏は、このようなGM作物の開発には害虫抵抗性・除草剤耐性の第一世代GM作物の開発よりも複雑な難題があると説明、干ばつが起こりやすい地域の農民は、当面、[大量の水を要する]トウモロコシへの依存を減らし、干ばつに比較的耐えるソルガム、キャッサバ、甘藷などの作物の栽培を増やすべきだと語ったという。

 ケニヤは現在、深刻な干ばつに見舞われている大多数のアフリカ諸国のなかでもとりわけ厳しい食料危機の最中にある。外国からの食料援助も尽き果てつつある。国連世界食糧計画(WFP)は最近、干ばつの破滅的影響を受けたケニアの諸地域では、生き残るために外国からの援助を必要とする数百万の人々を助ける新たな援助の供与がなければ、人道的大災厄が起きると警告している。

 北部・東部の250万の人々に対する食料援助は2週間以内に尽き果てる、昨年12月の最新のアッピール以来、増加する必要に対して非常な僅かな援助しか受け取っていない、現在養っている120万の人々に対する援助も不十分だが、2月には援助を必要とする人口は250万に増えるだろうという。

 Kenya: UN Agency Stocks Run Low As Drought Leaves Millions More in Need of Aid,UN News Service,1.25
 http://www.un.org/apps/news/story.asp?NewsID=17282&Cr=food&Cr1=

 一ニュージーランド企業は、ケニアの飢えた子供たちを救うために、42トンのドッグ・フードを送るという情報まである。 国際社会のアフリカ人蔑視の意識を象徴する。

 For Starving Children of Kenya, 42 Tons of Dog Food...,The Nation,1.31
 http://www.nationmedia.com/dailynation/nmgcontententry.asp?premiumid=0&category_id=1&newsid=66254
 Why they ridicule Kenya,The Nation,2.3
 http://www.nationmedia.com/dailynation/nmgcontententry.asp?category_id=24&newsid=66430

 こんななかで、アフリカの人々を飢餓から救うというバイテク企業の約束とこの現実の巨大なギャップはいつ、どうしたら埋められるのだろうか。

 国連食糧農業機関(FAO)は1月30日から第24回アフリカ地域会議を開いた。会議はアフリカの種子とバイオテクノロジー、農地改革やグローバル化し、自由化が進む世界でアフリカの農業競争力と自然資源管理をいかに強化するかを論議する。しかし、バイオテクノロジーは、もし適切に開発されれば食料安全保障の新たな広大な能力を提供することが広く認められているが、特にアフリカではこの技術とGMOに関する立法が不備で、GMOに関する規制の枠組みを持つ国がほとんどないために、この技術とGMOの安全性に関する現実的な・また意識上の懸念が強いという。このような問題も10年後に解消されている保証はない。

 FAO’s Regional Conference for Africa opens,1.30
 http://www.fao.org/newsroom/en/news/2006/1000218/index.html

 関連情報
 http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/gmo/africa.htm
 


 
.