中国の食肉消費増大で2010年には世界穀物在庫が空っぽに 新研究

農業情報研究所(WAPIC)

08.5.2

  Biofuels Digestの新たな研究によると、1995年以来の中国の食肉消費の増大で年に80億ブッシェル(約2億3000万トン)の穀物が家畜飼料に転換され、このまま進むと2010年9月には世界穀物在庫が空っぽになる可能性があるという。

 ”肉 vs 燃料:米国と中国における穀物利用、1995-2008”と題するこの研究は、米国がエタノール産業を明日閉鎖したとしても、中国の食肉需要の増大と家畜飼料の確保で、世界穀物在庫が空になるまでの時間がほんの僅か延びるだけだと結論する。

 研究の背後には、現在の食料価格高騰→多くの途上国における食料危機の”元凶”とされがちなバイオエタノール産業を擁護しようとする政治的意図があるかもしれない。とはいえ、エタノール産業がなかったとしても、農業・食料生産の飛躍的増大がないかぎり、人口増加と中国、インドをはじめとする途上国の食料消費の増大でいずれ今日のような事態が起きるのは確実だ。それは、早くから予想されてきたことだ。

 エタノール産業を擁護するつもりはないが、それ以上に問責されるべきは、大量の農業補助金によって途上国農民が到底競争できないような価格で世界中に穀物をばら撒いてきた米国やEU、こうして都市に追い出された貧民を養うためには好都合と先進国の補助金を容認どころか歓迎さえしてきた多くの途上国政府、そして途上国への貸付条件として輸入自由化、規制緩和、補助金削減を強要する一方、研究開発も含む農業開発援助を削りに削ってきた国際社会である。

 この研究は、こうしたことを再確認させる意義を持つ。

  Meat vs Fuel: Grain use in the U.S. and China,1995-2008
  http://www.biofuelsdigest.com/MeatvsFuel.pdf

 この研究によると、米国は2007年、1995年の1億9200万トンよりも1億5700万トン多い3億4900万トンのトウモロコシを生産した。しかし、この増加では需要の増加に追いつかなかった。穀物不足と価格上昇の第一の元凶と批判されてきた米国のエタノール産業は、この12年の間に穀物利用 (飼料成分として利用できるエタノール生産の副産物=DDGSを差し引いた量)を3100万トン増加させた。他方、中国の食肉消費のための家畜飼料用穀物需要は1億9900万トン増加した。

 米国の人口は過去13年で15%増加した。それだけならば、米国のトウモロコシ生産の82%の増加で人々、家畜、エタノールの需要を十分に賄うことができたはずだ。研究は、中国と米国の需要増加に焦点を当てることで、燃料対食料の論争では答えられないいくつかの問題を解決するという。

 研究は、バイオ燃料生産には使われないにもかかわらず、米はトウモロコシや小麦よりも大きく値上がりしたことを確認する。また、世界穀物在庫の低下が中国の消費の増加に対応していることも確認する。

 中国の1995年以来の食肉消費は1人当たりで112%増加して、年1人当たり53kgになった。中国人が2007年にも1995年と同じ量の肉を食べていたとすれば、9億2700万の飢餓人口を十分養うことができる穀物が残ったすはずだ。中国の成長が余りに速過ぎるから、米国エタノール産業を明日閉めたとしても、2011年までには中国の需要増加が過剰な穀物を飲みつくす。

 さらに、中国人1人当たり食肉消費が急増したといっても、なお米国人1人当たり消費の45%にすぎない。これが米国人並みになれば、さらに2億7700万トンの穀物が必要になる。この穀物の生産には6800エーカー(2700万f)必要だ。再生可能なエネルギーのための穀物を栽培しようとしまいと、これほどの耕作可能地はどこにもない、ということだそうである。


 中国や途上国の消費の増加自体を非難するわけにはいかない。アマゾン森林をこれ以上破壊することなく食料を増産する方法を探し求める必要がある。「開発のための農業科学・技術国際アセスメント」(IAASTD)が一つの方向を指し示している(→食料危機の悪循環が始まる?森林破壊で農地拡大 藁のバイオ燃料化で痩せる土地,08.4.27)。