FAO事務局長が食料”新植民地主義”に警告

農業情報研究所(WAPIC)

08.8.25

 フィナンシャル・タイムズ紙によると、国連食糧農業機関(FAO)のジャック・ディウフ事務局長が、自国の食糧安全保障を強化するために海外に農地を確保しようとする食料輸入国の動きが”新植民地”システムを作り出す恐れがあると警戒している。

 事務局長によると、このような動きは、生産国に非付加価値原料農産物の供給や容認できない農業労働条件を強要する新植民地協定を生み出す恐れがある。最近の投資動向に言及、「いくつかの交渉は不平等な国際関係と短期的な利益本位[mercantilist、重商主義的]農業につながった」と語ったそうである。

 同紙は、事務局長は投資する金持ち国と土地・水資源が豊かな国の合弁事業の強力な支持者であったから、この警告は重要な意味を持つと指摘する。

 FAOは、土地所有権の問題や、ホスト国にどれだけの食料が残されるのかという問題も含め、この動きに関連して生じる恐れのある問題を分析するタスクフォースを立ち上げた。国連担当官は、石油・鉱物採掘産業が腐敗に挑戦し・統治を改善するのを助ける”資源採掘産業透明性拡大イ二シアティヴ”(EITI、ブレア英国前首相が提案)に類似の計画が有益かどうか議論しているという。 

 UN warns of food 'neo-colonialism' Financial Times,8.20,p.3
  または
 UN warns of food ‘neo-colonialism',FT com,8.19
  http://www.ft.com/cms/s/0/3d3ede92-6e02-11dd-b5df-0000779fd18c.html?nclick_check=1


 このホームページでも再三注意を促してきたように、最近の世界的食料価格高騰やあり得る供給途絶への恐れから、食料生産に不可欠な水資源が枯渇し・他方でオイルマネーで潤う中東産油国を中心に、食料輸入国が土地と水が豊かな外国での食料生産に投資する動きが勢いを増している。

 サウジアラビアは、ウクライナ、パキスタン、タイや、スーダンで肥沃な土地を探し求めている。国がトウモロコシ、小麦、米などを海外で栽培する大規模プロジェクトを立ち上げ、後に民間企業が事業に乗り出す。個々のプロジェクトがかかわる面積は10万fを超え、生産された作物の大部分が本国に輸出される。

 アラブ首長国連邦はカザフスタンやスーダンで土地を物色しており、リビアもウクライナでの借地を望んでいる。韓国はモンゴル進出をほのめかし、中国も東南アジアでの投資を追求している。

 他方、資金不足で農業投資もままならない土地・水資源国はこの動きを歓迎する。多くの地域が干ばつなどで飢餓に悩むスーダンやエチオピアでさえ、政府はナイル水系沿いの緑と水が豊かな地域 (下の写真)への農業投資を”熱烈歓迎”だ。しかし、投資国との二国間協定は、危機に際して生産国が課す輸出制限さえ禁じる恐れがある。


Nile 08.6 photo:Maki Kitabayashi

 

 バイオ燃料(+バイオ樹脂)ブームに代表されるエコブームは、とりわけアフリカで”新植民地”を生み出している。基礎食料を生産する広大な一等農地が先進国企業によって”収奪”され、サトウキビやヤトロファなどのバイオ燃料原料を生産するための土地に変えられつつある(例→タンザニア 60万f超の食料生産適地が外国企業のバイオ燃料作物栽培に,08.7.25)。今や、一部はバイオブームが助長した食料価格高騰までもが”新植民地”の生成と拡大を促そうとしている。”エコ”も”食料生産”も利益本位(mercantilist)でしかあり得ないとすれば、これは必然だ。

 今や、バイオ燃料vs食料の対立図式は古い。バイオ燃料であろうが、食料であろうが、利益本位・商業主義的・重商主義的であるかぎり、等しく社会・経済・環境悪影響につながる。