FAO 収穫後損失が飢餓を重大化 投資と訓練で損失は劇的に減る

農業情報研究所(WAPIC)

09.11.4

  国連食糧農業機関(FAO)が11月2日、途上国で生産される食料の多くの部分が収穫後に失われており、これが飢餓を重大化させている、収穫後に失われる食料は適切な投資と訓練で劇的に減らすことができるという報道発表を行った。

 Post-harvest losses aggravate hunger,FAO,09.11.2
 http://www.fao.org/news/story/en/item/36844/icode/

 収穫された食料のは15%50%が失われるという推定があるが、その原因はさまざまだ。これには、生産物の価値を減らす不適切な成熟段階での収穫・雨ざらし・干ばつや極度の異常気温・微生物汚染・物理的損傷などが含まれる。 

 また、収穫物は、収穫作業、荷積み、包装、輸送の間の落ちこぼれ、不適切な道具による損傷、化学物質汚染、粗雑な扱い(蓄熱を含む)などでも価値が損なわれる。

 このような損失が、市場に出る食料を減らし、高い食料価格をもたらしている。誰も消費しない食料を生産し・加工し・扱い・輸送するために土地、水、労働、肥料・エネルギーなどの非再生可能資源が使われるのだから、これは環境や気候変動にも影響を及ぼす。

 しかし、これらの損失は、収穫後の食料を適切に扱うことで大きく減らすことが出来る。このために、FAOは世銀等と協力、3大陸で多数の人々のトレーニングをしてきた。たとえば穀物のマイコトキシン(アフラトキシンなどかび毒)汚染が重大問題となっているケニアでは、ケニア農業省とともに、食料生産にかかわる人々に対する技術訓練を行ってきた。

 2008年の食料危機に際して浮かび上がったのは、多くの途上国における不適切な貯蔵施設の問題だ。ドイツが資金を提供したアフガニスタンでの最近のFAOプロジェクトは、およそ1万8000の家庭に金属製サイロを提供した。これによって貯蔵食料が虫・ねずみ・鳥・菌類から守られ、品質も長期にわたって保持される。15〜20%にのぼっていた収穫後の損失が1〜2%にまで減った。こうしたサイロが地方で製造され、農家に販売できるように、技術訓練も行った。

 通常は20%の収穫後損失があるギニアでも同様のプロジェクトを実施して大きな成果が上がっている。全体では16ヵ国で、4万5000以上のサイロが設置され、1500人以上が建造と扱い方のトレーニングを受けた。

 多くの途上国では、小農民がサイロ建設のための資材を購入する資金を持たないという問題が残る。倉庫の受入れシステムなどの革新的な制度的メカニズムの確立も必要という。

 ただ、収穫後損失の問題は途上国だけの問題ではない。先進国のスーパーは、果物や野菜を一定の基準で等級づけしており、傷がある、萎びている、未熟だ、形が悪い、サイズが違う、見た目が悪いなどと受け入れない。このような生産物には別の市場がないことが多く、捨てられることになる。

 FAOは、多くの途上国では、2050年には人口がピークに達すると予想され、都市化も進むから、食品チェーン全体で食料損失を大きく減らす必要があると強調する。 


 FAOは今年9月、2050年までに23億人増える人口を養うために、食料生産を70%増やさねばならないと発表した。このとき、収穫後損失については一言も触れていない。

 2050: A third more mouths to feed,FAO,09.9.23
 http://www.fao.org/news/story/en/item/35571/icode/

 途上国、先進国の収穫後損失を劇的に減らせば、ほとんど不可能に見え、遺伝子組み換え作物企業を勢いづかせるだけの70%増産など無用となるのではないか。収穫後損失を減らせという今回の新たな発表は、これについては一言も触れていない。

 ストックホルム国際水研究所(SIWI)・国際水管理研究所(IWMI)の研究は、世界の食用作物収穫量は、今すでに、食料として利用されてい量より70%多いどころか、倍以上にもなると推定している。

 畑から食卓までの間における損失と廃棄が生産量の半分にもなる。食べられる作物の収穫量は1人1日当たりで4,600キロカロリーだが、収穫後の損失で600キロカロリー、その一部を家畜に与えることで(肉などで取り戻される分を差し引いて)1200キロカロリー、流通過程と家庭における損失・廃棄で800キロカロリーが失われ、利用できるのは2,200キロカロリーと半減してしまう。

 途上国では、効率的な収穫技術や貯蔵・輸送施設を欠くために、損失の多くは畑や貯蔵・輸送の過程で生じる。先進国では加工、流通、家庭・食堂などでの最終消費の段階での廃棄による損失が半分ほどを占める。

 食料・水問題の解決には食料損失・廃棄の削減が決定的に重要ー新研究,08.5.26

 「ますます希少になる天然資源を使い、気候変動に適応しながら」(FAO)、何故70%も増産する必要があるのだろうか。 収穫後損失を減らす方がはるかに実現の可能性が高く、環境にも優しい。