農業情報研究所農業・農村・食料食糧問題ニュース:2013年12月23

工業的農業では世界人口を養えない 米大学研究者の新たな統計的研究

  ネブラスカ大学リンカーン校の研究者による新たな研究*によると、改良品種や化学肥料・農薬の普及、大量の灌漑インフラ投資など1970年代の「緑の革命」のテクノロジーによって世界的に拡散した工業的農業は、増大する世界人口を養う十分なほどの作物を生産する能力の壁にぶつかるだろう。主要食料作物―米、小麦、トウモロコシ―の収量の過去のトレンドを特徴づける統計モデルは、これら作物の収量の増加率が長期にわたり不断に低下していることを示している。そればかりか、世界の米、小麦、トウモロコシの31%を生産する東アジアの米と北西ヨーロッパの小麦を含め、収量が上限に達しているか、突如として減少に転じている証拠さえあるという。

  *Patricio Grassini et al.,Distinguishing between yield advances and yield plateaus in historical crop production trends, Nature Communications,17 December 2013      http://www.nature.com/ncomms/2013/131217/ncomms3918/full/ncomms3918.html

 1981年から2000年にかけ、中国の農業投資は3倍に増えたが、小麦収量はコンスタントにとどまった。トウモロコシの収量も、投資の58%増加にもかかわらず、ほとんどフラットにとどまっている。

  研究者によると、収量の頭打ちは平均収量がこれら作物の“生物理学的”(biophysical)上限―それ自体は作物が生産される地域の生産潜在能力で決定される―に近づいていることから説明できる。このような食料生産の減少または頭打ちに寄与している要因には、土地と土壌の劣化、気候変動と季節の天候パターン、肥料や農薬の使用、不適切な投資が含まれる。

  こうしたことは、遺伝子組み換え技術の称揚者を含む工業的農業の唱道者を除く人々が既に警鐘を鳴らしてきたことだ。この研究は、それを新たな統計手法で確認したところに意義がありそうだ。それは、伝統的な工業的手法では将来の世界人口は養えないと確信させる。食料廃棄を減らし、水利用を効率化し、土壌劣化に寄与する肥料や農薬への依存も減らさねばならない。

  国連食料への権利特別報告官、オリヴィエ・ドゥ・シュッテルが持続可能で小規模な有機的方法に基づく“アグロエコロジー”で世界食料生産を倍にすることができると報告したのは2年前のことである。フランスは“アグロエコロジー”農業に向けて舵を切る(フランス 「農業未来法」制定を準備 農業生産と生態系の対立を克服する農業・環境プロジェクトが柱,13.5.13)。日本は大規模な工業的農業の構築に邁進するのだそうであるあ(農林水産業・地域の活力創造本部決定;農林水産業・地域の活力創造プラン,13.12.10)。

  *Report: Agroecology and the right to food, 8 March 2011
   http://www.srfood.org/en/report-agroecology-and-the-right-to-food