ブラジル:大豆がアマゾンを呑み尽くす―営利主義がもたらす環境破壊

農業情報研究所(WAPIC)

03.12.20

 営利を求めての歯止めなき大豆栽培拡大、アマゾンの熱帯雨林は生き残れるのか。AP通信からの報告を紹介する(Groups Clash Over Soybean Boom in Brazil,AP,12.18

 苛刻な熱帯気候の下でよく育つようにブラジル科学者が開発した大豆新品種、農民には申し分がないものだ。南米最大のこの国を、米国を凌駕する世界一の輸出国に押し上げようとしている。

 だが、環境活動家には、これはホラー物語だ。大豆は、プランテーションに道を開くために、ますます多くの熱帯雨林を必要としており、これに大規模牧場経営の侵略も加わる。アマゾンは、昨年だけで1万平方マイルの森林を失った。これは前年より40%も多い。

 ケレンシアでは、繁栄する南部から移住したカウボーイ・ハットの牧場主がアマゾン・インディアンと肩を擦り合わせる。トラクタ−トレーラーが砂塵を巻き上げ、肥料を運び込み、巨木の幹を運び出す。雨林南辺のほこりっぽいこのブームの町ほど大豆の両刃の攻撃が目立つところはない。

 最近ここに移住した木材業者・リマは、「農民は大豆に道を開けるために何でも切り倒す。これは自分にとってもいいビジネスだ」と言う。

 切り開かれた高速道路は100マイルほど奥で終わるが、路傍の広告板は果てしない緑の畑の風景の中に、なお立ち並ぶ。広告板は、カーギルやブンゲのような多国籍巨大アグエリビジネスのプレゼンス(存在感)を誇示している。

 地球の友・ブラジルのロベルト・スメラルディーズは、「牛牧場ののち、大豆がアマゾン破壊を引っ張っている。小規模土地保有者が大豆農民に売ろうと大量の土地で切り倒しており、別の場所の牧場は大豆に転換されつつある」と言う。米国での生産見通しが今年は予想外に少ないお陰で、大豆価格は5年来の高さになっている。ブラジル農民は、安い土地を手に入れようと、ジャングルに殺到している。

 農業コンサルタント会社役員のゴメスは、大豆一袋はおよそ11.85ドルで売れ、生産コストは6−7.50ドルだから、高い利益が出るが、「価格は大きく下がるはずで、拡大はストップするだろう」と言う。

 大豆進撃の前線は、ケレンシア、14のインディアン部族が数千年も暮らしてきた雨林のほとんど手つかずの一切れ、シングー国立公園を含む6,800平方マイルの一自治体である。インディアンは、大豆ブームはすべてを変え始めたと言う。

 「大豆はあっという間にやってきた。シングー・インディアン土地協会理事のlonalukaは、「森が消えつづけているから、居留地を出るたびに、西も東も分からなくなる」と言う。シングー周辺では、去年、500平方マイルの森が消えた。

 州環境庁森林資源局のブリトー局長は、「州全体の森林消失面積は、01年から02年のかけて、30%増えた。今年は州全体の数字は分からないが、ケレンシア地域では間違いなく増えいているを思う」と言う。

 インディアンは、森林消失がシングー居留区を流れる川を干上がらせ、トカゲやシロアリから作物を護るために使われる化学物質が魚を毒することを恐れる。

 衛星写真は、1万800平方マイルの居留区の南半分が、ほぼ完全に農地に取り囲まれていることを明かにしている。環境活動家は、これがアマゾンの将来の姿となることを恐れる。

 大豆生産者はジャングル縦貫道路を開くように圧力をかけており、カーギルは最近、アマゾン川のサンタレム市に大きな港を開いた。批判者は、もしチェックされなければ、大豆栽培は広大な雨林を呑み尽くし、環境を破滅させるだろうと恐れる 。

 だが、世界最大の大豆生産者の一人でもあるマット・グロッソ州のマギーは、こんな恐れは根拠がないと言う。彼は、州の厳格な環境ルールが守られていれば、損害は最小限に止められると言い、環境グループは不要な心配を掻き立てていると批難する。

 マギーによれば、「環境への関心の背後には経済的利害がある。彼らはブラジルの成長を阻害し、あるいは遅らせようとしている」。彼は、州の34万9,807平方マイルの40%が農業に当てられ、60%が保全されるのが理想的と言う。

 彼は、彼がオフィスを去る07年までに、州が現在の5倍、02年のブラジルの生産全体に等しい年に1億トンの大豆を生産するようになっていることを望んでいる。

 州は厳格な環境規制とブラジルのマゾン破壊監視・防止の最も進んだシステムをもつが、批判者はそれが執行されるかどうか疑う。州の農業のための火付けと森林火災の多さはブラジル一である。

 森林破壊がシングー河を干上がらせ、農薬が一匹の魚を殺したという証拠はない。しかし、インディアンは、大豆ブームは始まったばかり、手遅れになる前に自分を護ることを望んでいる。

 インディアンの村・カピバラの村長・Kayabiは、森林消失の影響は地域の川に現われていると言う。94年、200マイル離れた場所での大規模開拓プロジェクトは水路を泥で濁し、弓と矢による伝統漁法での漁獲を不可能にしていると言う。インディアンは、容器の再利用禁止の警告のある大きなドラムに入ってやってきて、土地に流れ出るときに空中に蒸発する農薬も恐れている。

 シルバ連邦環境相は、大豆生産が雨林を消滅させてはならないと言う。

 「マット・グロッソだけで1,200万エーカーの放棄地がある。既に荒廃したこれらの土地を集約的に利用し、森林が残っている場所に進むのは避ける努力をしなければならない」。

 安価な土地がアマゾンの大豆ブームの一つの要因である。

 ”アメリカ農業協同組合”のためにケレンシアの1万1,115エーカーの農場を管理する46歳のインディアン農民・エドワードは、ブラジルでの経営運転コストは米国と同じだが、土地が相当に安いと言う。94年にここに来た彼によれば、「開拓後4年か5年は利益が出る」。彼が来たとき、農地のコストはエーカー当たり40ドルだったが、現在では650ドルで売れる。

 環境活動家は、そのような農地は利用できるとしても、未開拓の森林はもっと安い。エーカー当たり41ドルで、違法な開拓を誘う」と言う。

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 Amazon may be levelled by the humble soya,Guardian,12.20

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