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カナダ:作物生産回復の予想、残る猛暑の影響の不安

農業情報研究所WAPIC)

03.8.26

 今年、欧州農業は厳しい干ばつ被害に泣いているが、昨年同様な大被害を受けたカナダの今年の耕種作物生産は回復しそうである。害虫被害や暑く・乾燥した天候にもかかわらず、8月22日に発表されたカナダ統計局(Statistics Canada)推定(Estimates of production of principal field crops, as of July 31, 2003 (estimates))では、今年の作物生産は容易に昨年を上回る。これは、7月25日から8月3日にかけて行なわれた1万7千の農家に対する電話インタビューの結果に基づく。

 小麦総生産は2,100万トンで昨年を34%上回り、過去5年の平均の2,280万トンに迫るだろうという。小麦平均収量は、昨年の1.82トン/haから2.00トン/haに増える。東部カナダは好適な作付・栽培条件に恵まれ、オンタリオの冬小麦は過去4年の140万トンの記録を軽く突破、200万トンに跳ね上がる。西部では、収量増加と作付面積増大の結果として、春小麦生産は42%アップ、1,420万トンになる。ただ、過去10年平均の1,830万トンにはもちろん、1991年の2,650万トンの最高記録には遠く及ばない。アルバータは83%、サスカチェワンは54%の増加が予想されるが、マニトバでは11%減少する。

 西部のデュラム小麦は前年より2%だけ増加の380万トンになる。収量は9%落ちるが、収穫面積が増加する結果である。デュラム小麦は、主として平原地帯南部で栽培され、この地域での干ばつ被害は昨年ほどではないが、過去10年平均の440万トン、最高記録の600万トンには遠く及ばない。

 西部の大麦生産は昨年を480万トン上回り、過去10年平均の1,140万トンに近い1,100万トンになる。

 カノーラ生産は収量増加と面積増加で昨年を270万トン上回り、過去10年平均の620万トンに戻る。

 トウモロコシについては、ケベックの生産は昨年の記録を1%上回り、過去最高の320万トンになる。オンタリオでも昨年より2%増加、過去10年平均の520万トンを超える560万トンになる。

 回復予想にもかかわらず、小麦生産は過去の記録に及ばないし、天候異変の脅威がまったくなくなったわけではない。カナダは、この調査が実施されたあと、特に西部で記録的猛暑に襲われている。山林火災が頻発、手がつけられない状況が続いており、火は居住地域に迫り、農地や農業施設、ワイナリーなどにも被害が及び、何千もの人々が避難を強いられている。この収穫予想は下方修正される可能性も高い。