農業情報研究所農業・農村・食料北米ニュース:12年8月23日

アメリカ 食べられる食料の40%が農場から食卓までで失われる 自然資源の浪費に警告

 アメリカ最強の環境活動グループの一つをなす自然資源防衛会議(Natural Resources Defense Council;NRDC)が8月21日、アメリカ人は毎年、食用に適する食料品の40%をゴミ箱に捨てているという分析結果を発表した。

 農場では、生産者はときに、労働費や輸送費も回収できないような生産物市場価格のために収穫を放棄する。市場は、見た目が悪いからと、収穫した作物の廃棄を生産者に強要する。報告書は、食べられるキュウリの75%は捨てていると推定する生産者の言葉を引用する。腐りやすい品物は、一旦出荷されても、これを店に納入する流通業者やフードバンクによってさえも突き返されることがある。

 廃棄が一番多いのは、店や家庭である。スーパーで売れ残って捨てられる果実・野菜は、年に150億ドルにのぼる(政府の推定)。客に強く印象づけるために、仕入れが過剰になる。レストランなどで出される一人分の食事は、食べきれないほど多くなる。家庭は賞味期限とか消費期限とかの日付表示の意味も知らずに、バンバン捨てる。

 普通のアメリカ人家庭の家計費に占める食費の比重は非常に小さいから、消費者は捨てることがあまり苦にならない。他方、食品産業の側からすると、消費者が捨てれば捨てるほどたくさん売れることになる。食品廃棄の増加には経済的理由がある。現在のアメリカ人の食品廃棄は、東南アジアの一部の国の10倍、1970年のアメリカ人の平均と比べても50%増えているという。

 しかし、食料生産に必要な資源のことを考えれば、なによりも廃棄食料を最小限にとどめねばならない。

 食料品供給のために供給エネルギーの10%、土地の50%、淡水の80%が使われている、それにもかかわらず、食料の40%が食べられることなく捨てられているということは、アメリカ人が1650億ドルのカネだけでなく、淡水の25%と巨大な量の化学物質、エネルギー、土地を浪費していることを意味する。それだけではなく、食べられなかった食料品のほとんどすべてが埋立地行き、ここで腐ってアメリカが排出するメタン(強力な温室効果ガス)の25%の排出源となっている。その上、アメリカ人の6分の1が日々の食事にも事欠くとき、この廃棄食料を25%減らせば、毎年2500万のアメリカ人を養うことができる。

 報告は、アメリカ政府はヨーロッパ、とくに5年前に “Love Food Hate Waste” (食料を愛し、廃棄を憎む)運動を始めたイギリスに倣い、食品廃棄減らしに本気で取り組めと勧告する。

 Wasted: How America Is Losing Up to 40 Percent of Its Food from Farm to Fork to Landfill,NRDC Issue PAPER,August 2012
   http://www.nrdc.org/food/files/wasted-food-IP.pdf

 これは、日本にとっても他所事ではない。

 関連情報
 
EU欧州議会 食品廃棄物半減を 食品大量浪費は倫理的・経済的・環境的に許されない,12,1,26