農業情報研究所農業・農村・食料北米>ニュース:2019514

トランプ大統領 対中輸出減少で余った大豆を人道的食料援助に

米国大豆相場の下落が止まらない。トランプ大統領が仕掛けた対中貿易戦争のおかげで米国大豆の行き場がなくなってしまった(シカゴ大豆先物相場 2007年以来の最安値 トランプ貿易戦争のツケ 農業情報研究所 19.5.11)。先週末、シカゴ先物相場はブッシェル7.9ドルという8ドルを割る未知の領域に突入したが、週明け月曜日にはさらに7.91ドルまで下落した。最も一般的な大豆品種の生産コストはブッシェル8.86ドルから9.21ドルと言われるから(US-China tensions knock soyabeans to post-crisis low,FT.com,19.5.10)、大部分の農家の大豆生産は割に合わない。

それでも今年の作付けはもう始まっている(Crop Progress,USDA,5.14)。トランプ大統領、どうしてくれる?!。農家の怒りは収まらない。2020年大統領選、こういう農家の票は現大統領から離れ、農民票集めに動き出した民主党候補に向かう恐れがある(Democrats take on Big Agriculture,Financial Times,19.5.13,p.17Democrats take aim at big agribusiness,FT.com,19.5.12)。

 かくてはならじ、トランプ大統領、余った農産物は政府が買い上げ、人道援助として“飢えた国”に輸出すると宣言、農務省(USDA)も早速その準備を始めた。

 しかし、大量の対中輸出減少分(Oilseeds: World Markets and Trade May 2019 USDA)をどこの“飢えた国”に押し付けようというのだろうか。米国農民が生産する大豆(yellow soyabeans)の大部分は、小麦などと違って人の食べ物にはならない。加工されて動物の飼料成分か、植物油として消費される。“飢えた国”はこんな援助物資を必要としていない。援助物資流入で受け入れ国の農民が損害を被る恐れもある。米国の競争相手である農産物輸出国が輸出補助金禁止のWTOルールに違反すると反対する恐れもある。

  US farmers fret over China trade threat to aid deal,FT.com,19.5.13;US plan to buy surplus cerops leaves soya farmers in uncharted territory,Financial Times,19.5.14,p.19

 

 トランプ大統領、米国市場だけではない、世界市場を一層混乱させることになるだろう。大統領、どこまでいっても世界の厄介ものだ。