農業情報研究所農業・農村・食料北米>ニュース:2020年4月17日

新型コロナの米国農業への影響―ミズーリ大学研究所のリポート

ミズーリ大学食料農業政策研究所が、新型コロナの農産物市場と農民所得への影響に関する新たなリポートを発表した。

リポートは、経済も、農業も、新型コロナは全く未経験であり、この分析に以前の経験は役に立たない。市場条件も不断に変わりつつあり、分析は予備的で、非常に不確実なものだが、影響の大きさ・程度の概念図は示すことができるという。それによると、米国農民は2020年、新型コロナの影響で純所得200億ドルを失うことになるだろうという。

 リポートによれば、世界的パンデミックは、作物・家畜価格、燃料・エタノール需要など、米国農業のあらゆる分野に広範な影響を及ぼす。、

 2020年消費者支出は、2019年に比べて5%減少する。それが農産物に対する需要を減らし、価格を押し下げる。コーン、大豆なの価格は5%から10%下がり、家畜の価格は12%ほど下がる。

 ただ、パンデミック、非常事態対応が長引けば長引くほど、影響のマグニチュードは大きくなり、事態は一層悪化する。農務省の介入も考慮する必要があるが、それは未知数だ。

 1980年代の農業危機に際して設立されたミズーリ農村危機センターのTim Gibbons広報部長は、新型コロナは企業的大規模農家が支配する米国の農業食料システムの問題・弱点を際立たせたに過ぎない、新型コロナで破綻しそうな大規模農家に大枚を注ぎ込むより、小規模農家を駆逐してきた米国農業システムを小規模模農家を尊重するように見直すこと、それが最善のコロナ対策だと主張する。

 University of Missouri report forecasts loss of billions for farmers in 2020,Des Moines Register,20.4.17

  多くの食肉工場が密接して働く労働者の感染で閉鎖に追い込まれたように(U.S. Food Supply Chain Is Strained as Virus Spreads,The New York Times,20.4.14)、食肉産業の集中・大規模化とともにリスクも増大する。新型コロナ禍がもたらした教訓だ。