農業情報研究所

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米国:飼料は有機でなくても有機肉、法案が議会通過

農業情報研究所(WAPIC)

03.2.15

 昨年10月21日、米国は95%から100%が有機である製品にのみ有機の表示を許す新たな表示指針を発効させた(米国:農務省の新たな有機基準とシール、製品が真に有機であることを消費者に保証(02.9))。それから4ヵ月も経たない2月13日、米国議会は、一部または全体が有機でない通常の飼料で育てられた家畜・鶏の肉にも「有機」の表示を許す法案を通過させた。14日付の「ニューヨーク・タイムズ」紙(1)や「サンフランシスコ・クロニクル」紙(2)がそう伝えている。

 3,000ページにのぼる新財政年度の歳出法案の採択直前、業者の要請を受けた議員が、農務省は、有機飼料が通常飼料の2倍以上の価格でしか利用できない場合には、有機の表示を許す規則を執行できない[執行のための支出を認められない]とする条項を法案に付け加えたのだという。

 法が変わったからといって、すべての有機生産者が飼育方法を変えるわけではない。しかし、ニューヨーク・タイムズによれば、有機チキンのテスト販売をしている「タイソン・フーズ」のスポークスマンは、そんなことになれば有機基準の尊厳に傷がつくから、有機の要件を満たすことは重要だと言っている。サンフランシスコ・クロニクルによれば、連邦有機食品基準の原案の起草者の一人である有機農業研究在団理事長のBob Scowecroftも、この条項は「有機」の用語を危機に陥れると言う。この条項は、米国の有機産業全体を危機に陥れる可能性がある。

 昨年の米国新農業法は、農務省に、家畜・家禽のために有機で生産される飼料の利用可能性を評価するように指示した。有機取引協会(OTA)のメンバー企業からの情報に基づくこの報告は未だ出ていないが、有機飼料は通常飼料の2倍以上を下回る価格で、適切な量を利用できること示すと予想されている。OTAは、この法は、「基準に従っている多くの認証有機農民の顔を平手で打つもので、有機食品生産法の要件を満たす製品を消費者に提供するための内外の苦闘を台無しにする試みだ」と言う(U.S.trade group objects to provisions on organic feed,worldgrain.com,2.14)

 2001年7月のコーデックス委員会総会で採択された有機畜産物に関するガイドラインは、飼料は原則としてすべて有機飼料とするとしているが、わが国で検討中の有機畜産基準については、家畜の飼料まで有機でなければならないとすれば、輸入飼料が大半を占める日本の畜産ではほとんどが不可能という声もある。米国の動きは、有機飼料の利用可能性の問題が日本だけの問題ではないことを示している。しかし、これは有機産品全体への信頼性にかかわる問題であることも確かである。「真正」の有機と区別される何らかの有機「関連」認証・表示を認めるほかないのであろうか。

 (1)Weakening of Organic Standard Is Cosidered,The New York Times,2.14
 (2)
'Organic' losing meaning Late addition spending bill kills feed requirement for meat,SFGate.com,2.14