有機牛乳消費が高価格で伸び悩む―フランス統計研究

農業情報研究所(WAPIC)

03.10.10

 フランス農業・食料・農村省の統計研究(Agreste)が、高価格により有機乳の消費が伸び悩み、その3分の1が普通乳として販売せざるを得なくなっていることを明かにした(*)。

 フランスの有機乳生産(集荷)は急速に増大してきた。1998年と2000年の間に3千200万g、2000年と2002年の間に4千万万g増大し、2002年には2億400万g(うち牛乳が1億9千900万g、羊乳が400万g、山羊乳が100万g)となった。この急速な増大にもかかわらず、乳生産全体の1%を占めるにすぎない。今後一層の拡大の余地があるわけだ。しかし、この研究は、有機乳の加工が早くも天井に突き当たるか、後退に向かっていると言う。全国乳・乳製品事務所(Onilait)によれば、2002年の有機乳の3分の1が普通牛乳に格下げされたという。研究は、この原因を、輸入よりも消費者の需要の伸び悩みに帰している。狂牛病(BSE)を契機として有機乳への需要が増加、年に10%の伸びが続いているが、供給の増加には追いついていない。

 基本的原因は値段が高いことである。環境を尊重する生産方法は生産費を高める。生産者は分散が激しく、集乳費用が高くつく。加工能力が小さいことも価格を押し上げる。ある程度高くなるのは仕方がないと受け入れてきた消費者も我慢の限界に近づいたと考えられる。限界は有機生産の一層の拡大とコスト削減によって乗り越えるしかない。

 フランスはヨーロッパ一の農業大国であるが、有機農業では十二番目の遅れた国である。農用地面積に占める有機農地の割合は、イタリア、オーストリア、スウェーデンでは10%に達するが、フランスは2%で、EU平均の3.23%にも遠く及ばない。有機農業への転換の援助はこれらの国ほど厚いものではなかったし、転換後の経営援助はなかった。

 1999年農業基本法が制定した国土経営契約(CTE)が2000年以後の転換を大きく加速したが、保革共存が崩れた後の現保守政権は、カネがかかり非効率と、昨年夏にCTEを廃止してしまった。代わりに持続可能農業契約(CAD)を持ち出したが、未だに始動していない。これに有機転換が含まれるかどうかさえはっきりしていない。転換援助は停止したままだ。これでは他のヨーロッパ諸国に比べての遅れが広がるばかりである。

 今年7月、有機農業の促進策を問う農相の諮問に答えるオート・サボワの代議士・サジエの報告が出た(⇒文献情報)。それは有機農業の経済的・技術的弱点と関連部門の組織化の欠如を指摘、生産費の抑制と加工・流通部門の開発の努力の必要性を訴え、他のヨーロッパ諸国に追いつくための5ヵ年計画を提唱していた。これに応える動きも鈍い。フランス伝統の「生産(性)至上主義(productivism)」の重石はいつになっても解けそうにない。 

 *La collecte progresse de 27 % en 2002 mais peine à trouver preneur:Trop de lait bio ?,Agreste Primeur,No.136,07/10/03

農業情報研究所(WAPIC)

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