FAO等 外国農地取得に関する研究を発表 土地収奪、それとも開発機会?

農業情報研究所(WAPIC)

09.5.26

  昨日伝えたとおり(食糧安全保障のための外国農地”収奪” FAOが待望の報告発表へ)、5月25日、FAO、IFAD、IIEDの手になる最近の外国農地取得の動きに関する最初の詳細な研究が発表された。

 Land Grab or Development Opportunity? Agricultural Investments and International Land Deals in Africa
 ftp://ftp.fao.org/docrep/fao/011/ak241e/ak241e.pdf

 専らマスメディアが提供する情報に依拠したGRAINやIPFRIの研究と異なり、アフリカ5ヵ国(エチオピア、ガーナ、マダガスカル、マリ、スーダン)の政府情報・データも利用した研究となっている。しかし、政府情報・データ自体が極めて不備・不完全で、研究が依拠する情報・データの質が改善されているようには見えない。基本的結論も、IPFRIの研究と変わるところがなく、敢えて詳しく紹介することもなさそうだ。 

 要するに、アフリカやその他の国で土地取得が増加しており、貧しい人々が土地を追われ、あるいは土地・水・その他の資源へのアクセスを奪われるリスクがあるから、土地取得は、既存の土地利用や権利など地方の状況を慎重に評価し・農村コミュニティーの土地への権利を保証し・地方民が交渉に参加し・十分な情報に基づく事前の自発的同意を得た後になされるべきものだと言うに尽きる。

 IFADのRodney Cooke氏は、「十把一からげに”土地収奪”と言うのは避けたい。これらの取引が正しくなされれば、すべての当事者に利益をもたらし、開発の手段になる」と言っている。

 Land acquisitions in Africa pose risks for poor,FAO,5.25
 http://www.fao.org/news/story/en/item/19974/icode/

 
しかし、どうしたら「正しい取引」が実現できるのか、なぜ「正しくない取引」が横行するのかについては、IPFRIの報告と同様、まったく言及がない。今必要なのは、こんな「行動規範」や[ガイドライン」の提唱ではない。

 今必要なのは、50〜100年の無償リースといった事実上の国土売却によってまで、実現が保証されるわけでもない雇用創出やインフラ投資の約束を引き出さざるを得ない絶望的貧困から途上国を救い出す適切な国際開発援助である。