農業情報研究所農業・農村・食料海外農業投資>ニュース:10年8月16日

アフリカのランドグラブ 5100〜6300万haにも 地方住民と環境に多大な影響 メディア情報の精査による新たな推定

 デンマーク・コペンハーゲン大学のGlobal Land Project(GLP)が、2007-08年の世界食料危機を契機に急増している、アフリカにおける農地取得のための「ランドグラブ」(土地収奪)と呼ばれる国際土地取引の大きさ(マグチュード)と地域的パターンを推定した報告書を発表した。

 Land grab in Africa: Emerging land system drivers in a teleconnected world
 http://www.globallandproject.org/Documents/GLP_report_01.pdf

 ランドグラブ(日本人は「ランドラッシュ」の呼び方の方が馴染みかもしれない)と呼ばれる現象はここ数年、世界中の注目を集めるようになった。しかし、これに関する情報は、今なおメディアに頼るほかない。どこで、どんな土地取引が行われ、取得された土地で何が行われているのか、それは現地社会・経済・環境にどんな影響を与えているのか、正確にはほとんど知ることができないのが現実だ。

 GLPは、土地取引に関するニュース、報告、記事をシステマチックに更新し、この問題に関するメディアの報告のデータベースとして役立つ国際土地連合(ILC)が創設したブログ(ILC Blog 2010)の中の記事やメディアの報告のスクリーニングを通じ、2010415日までのアフリカにおける土地取引のマグニチュードと地理的パターンの推定を試みたという。

 結果の詳細は省き、結論だけを紹介すると次のとおりだ。

 データの正確さに一定の問題はあるものの、分析結果は土地取引のマグニチュードは大きく、現在、アフリカ中で土地取引が交渉されていることを示している。取引の対象となっている土地の量は、5100万ヘクタールから6300万ヘクタールの間、フランスの総面積に匹敵する。

 取引(投資)が特に集中しているのはエチオピア、モザンビーク、ウガンダ、マダガスカルなどのアフリカ大陸東部である。他に、スーダン、マリ、コンゴ民主共和国が広大な土地を提供している。取引対象の土地の面積の国の農地面積に対する比率は、確認された投資受入国(ホスト国)のうちの10ヵ国で5%を超え、ウガンダでは14%、モザンビークでは21%、コンゴ民主共和国では実に48%に達する。

 こうして、土地取引は、農業集約化、森林劣化、地方住民の移住、地域食料不安や貧困の増幅など、地方住民と環境に非常に大きな影響を及ぼすと予想される。全体として、国際土地投資は、ますますグローバル化する世界における土地システムの変化の新たな牽引力になる。

 なお、スクリーニングされた27ヵ国の177件に及ぶ土地取引の概要(ホスト国、投資者、投資国、関係土地面積、投資目的、作物、進捗状況など)は、報告のAppendix 1 Table1(24頁以下)に示されている。