農業情報研究所農業・農村・食料海外農業投資・ランドグラビングニュース:2015年11月21日

オーストラリア 北海道の面積も超える巨大牧牛地の中国企業による買収を阻止

 オーストラリア政府が19日、中国企業による3億5000万豪ドルでの買収話が出ていたオーストラリア最大の牧牛家族企業(S.Kidman社)の牧牛地・10万1411㎢(北海道と岩手県を合わせても9万3000㎢にしかならない)と牛(約20万頭)の外国人への販売を禁止すると発表した。

 同社の保有地は西オーストラリア、南オーストラリア、ノーザーン・テリトリー、クイーンズランドに広がっている。なかでも最大の単一地片をなす南オーストラリアの.Anna Creek Stationは、国の兵器試験サイトがあるウーメラ立入制限区域に隣接している。こういう土地が外国人の手に渡れば国防が危うくなる。それが禁止の理由という。

 ただ、外国投資はオーストラリア経済の発展に不可欠だ。国益に反することのない部分的な販売のドアは今まで通り開かれているという。 

 Federal Government says it will refuse to authorise sale of Australia's largest cattle holdings, S. Kidman & Co to foreign buyers,ABC,15.11.19

 この決定でオーストラリアの国益は護られるだろう。、増大する食料、というよりも食肉の需要を満たすために、中国はいくら農地があっても足りない。世界中で農用地を貪欲に漁る中国には大きな痛手になりそうだ。ただ、外国投資はオーストラリア経済に不可欠、ましてTPP発効となれば(その見込みはほとんどないがTPP締約国からの土地投資は阻止するわけにはいかない。国益に反しないかぎり、これらの土地の一部の買収の門戸は、今まで通り外国企業にも開かれているという。

 *TPPは米国の批准―米国議会による承認なしには発効しない。米国議会のTPP審議は来年11月の大統領選後になると見られているが、審議が始まったとしても民主党は反対、共和党も公表された協定案に何らかの修正を加えることなしには承認しないだろう。甘利が何と言おうが、再交渉は不可避である。