EU:科学運営委員会、BSE確認に伴う措置などで意見公表

農業情報研究所(WAPIC)

2002.1.25

 1月24日、EU科学運営委員会(SSC)は、BSEに関連した四つの新たな意見を公表した。これらの意見は、BSEが確認された際に取るべき措置(イギリスとドイツの措置の是非)、屠殺に際して牛を気絶させる方法(スタンニング)から生じるリスク、牛・羊・山羊の頭の各部の安全性、地理的リスク評価の見直しに関係する。

 わが国の生産者の中では、BSEが確認された農場のすべての牛を廃棄処分することに抵抗が強いようだ。そこで、ここでは、BSEが確認された際のイギリスとドイツの措置に関する意見を中心に紹介する。

 イギリスとドイツの措置は妥当か
 Opinion on the additional safeguard provided by different culling schemes under the current conditions in the UK and DE (adopted on 11 January 2002)

 EUは、昨年(2001年)5月、「伝達性海綿状脳症の予防・コントロール・根絶のためのルールを定める欧州議会及び閣僚理事会の規則(EC)No.999/2001において、牛にBSEが確認された場合に調査し、廃棄すべきリスクの高い動物等を次のように定めた。

 ・病気が確認された牛と同一農場で飼育されているすべての反芻動物、
 ・病気が確認された雌牛のすべての胎児・卵子・子、及びこの雌牛の発病に先立つ2年以内に採集されたか生まれたすべての胎児・卵子・子(母子感染のリスクがあること、及びこのリスクが発病2年以上前なら著しく小さいことを考慮したもの)、
 ・病気が確認された牛と同一の出生集団に属する牛。
 ただし、同等の安全保障措置を取る国には例外を認める。  

 しかしながら、イギリスは、一貫してBSEが確認された牛だけの廃棄にとどめてきたし、ドイツは廃棄する動物の範囲を「ケース・バイ・ケース」で決めてきた。今回の意見は、最近のフランス食品安全機関(AFSSA)の意見を考慮し、例外として認められるかどうかを改めて考察したものである。

 この意見によれば、イギリスについては、動物蛋白飼料の全面禁止(1996年)とこの禁止前に生まれた牛の処分、30ヶ月齢以上の牛の人間による消費の禁止(1996年)、特定危険部位(SRM)の禁止が相俟って、安全性のレベルは既に非常に高い。これらの措置が有効に実施されていれば、リスクのある動物を廃棄することによって安全性のレベルが大きく改善されることはありえない。つまり、上記の安全保障措置の有効な実施を条件に現在のやり方を認めるということである。

 ドイツに関しては、人間に消費される牛が動物蛋白飼料の全面禁止(2001年)以前に生まれているかぎり、24ヵ月齢以上の牛の検査(2001年から)やSRMの禁止(2000年10月から)が行なわれているとしても(これは、ドイツが安全性を主張する根拠である)、リスクある動物の廃棄により安全性が改善される余地は大きい。つまり、ドイツの現在のやり方は認められないということである。

 SSCはドイツに関するこの意見を次のように根拠づけている。

 普通に屠殺されるBSE潜伏期の牛が人間の食用に供される可能性があるが、これらの牛は動物蛋白飼料の全面禁止前に生まれており、屠殺されるときには30ヶ月齢を越えている。検査の結果が「シロ」であっても、それは病源体の脳への集中が検査による検出限界にまで達していないだけで、潜伏末期に近づいている可能性を排除できない。リスクは屠殺される牛の月齢とともに高まり、特定危険部位の排除はリスクを軽減するにしても、十分な安全は保証しない。 

 関連:フランス:BSE確認後の屠殺・廃棄政策変更へ,02.1.10

 スタンニング
 Opinion on stunning methods and BSE risks (the risk of dissemination of brain particles into the blood and carcass when applying certain stunning methods) (adopted on 10-11 January 2002 following a public consultation via Internet between 10 September and 26 October 2001)

 家畜銃、電気麻酔、空気銃などにより牛を失神させる方法により、脳組織が血液に入り、他の部位を汚染させるリスクを評価したものであるが、特にピッシングを伴う家畜銃、空気注入を伴う空気銃の使用はリスクが高い。しかし、全体として、利用できる証拠はあまりなく、一層の研究が必要としている。

 頭の安全性
 Opinion on TSE infectivity distribution in ruminant tissues (state of knowledge, December 2001) (adopted on 10-11 January 2002)

 牛については、特に新しい意見はない。EUでは、既に頭蓋全体を特定危険部位としている。羊・山羊については、これらの動物の中にBSEが存在するとなれば、すべての月齢の頭全体を危険部位とする必要があるとしている。

 地理的リスク評価
 Updated opinion on the Geographical Risk of Bovine Spongiform Encephalopathy (GBR) (adopted on 11 January 2002

 地理的リスク評価の方法を見直すとともに、従来はレベル2(BSEはありそうにないが、ないとはいえない)とされてきたオーストリア、フィンランド、スロベニアをレベル3(ありそうだが確認されていない、または低レベルで確認されている)に評価替え、日本とギリシャもレベル3とすることを提案している。

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