EU:羊と山羊の海綿状脳症(TSE)検査を拡充

農業情報研究所(WAPIC)

2002.2.15

 欧州委員会は、常設獣医学委員会(SVC)の賛同を得て、14日、昨年制定した伝達性海綿状脳症(TSE)に関する規則を修正、検査を拡大すると発表した(Press release: Extension of TSE tests in sheep and goats)。

 2002年4月から、大量の成羊を屠殺するEU構成国(ドイツ、ギリシャ、スペイン、フランス、アイルランド、イタリア、イギリス)が年間に検査すべき最小限の羊・山羊(18ヵ月以上)の頭数を現在の約万8千頭から万6千頭(内、農場で死亡した動物が6千頭)に引き上げる。年間屠殺頭数がそれより少ない国も検査数を増やさねばならない。その結果、EU全体では、年間の最小限の検査サンプル数は16万4千頭から56万頭に増加する。これに伴い、EUが供給する検査のための資金も増額する。羊と山羊のTSE検査のために2002年には290万ユーロの資金供給約束が既になされているが、近々、今年の検査キットの購入資金を400万ユーロ以上増額するように提案する。

 現在、羊や山羊が自然状態で感染するTSEは、人間の健康には影響を与えないと考えられているスクレイピーだけである。しかし、数年前から、牛海綿状脳症(BSE、狂牛病)がこれらの動物に伝播しているのではないかという懸念が表明されるようになった。現在までのところ、その証拠は出ていないが、科学者は、かつてはBSEに感染した可能性のある動物の肉骨粉によりがこれら動物が飼育された可能性を否定できず、これら動物にBSEが存在するリスクを排除できないとしている。欧州委員会の今回の措置は、このようなリスクを「予防原則」に基づいて回避しようとするものである。 なお、EUとEU諸国では、羊・山羊のBSEから生じるリスクを回避するために、検査の拡大だけでなく、ソーセージのケーシングなどに使われているこれら動物の「腸」を特定危険部位に指定しようとする動きも出ている。

 また、欧州委員会は、2001年12月の7日と13日に最初のBSEのケースが確認されたフィンランドとオーストリアについて、健康な牛の監視と脊髄除去に関する例外措置はもはや不適切としている。

 関連情報
 EU:科学運営委員会(SSC)が羊と山羊のBSEリスクに関する意見を発表(農業情報研究所、01.10.24)

 

 

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