農業情報研究所

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イギリス研究チーム、100万当り120人にvCJDの可能性

農業情報研究所(WAPIC)

02.9.21

 イギリスの研究チームが、1995年から1999年の間の10歳から50歳までの患者から取り除いた虫垂と扁桃腺を検査することにより、狂牛病が人間に伝達したものとされている変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)の発生数予測に一つの手がかりを与える研究結果を発表した(David A Hilton et al,Accumulation of prion protein in tonsil and appendix: review of tissue samples,British Medical Journal,21 September 2002)。ペーパーはBritish Medical Journalのウエブサイトで閲覧できる。

 検査された8,380のサンプルのうち、一つの虫垂に異常プリオン蛋白の蓄積が認められた。このことから、この時期・年齢の人々について、百万人当り120人にvCJDが発生すると推定されるという。The Independent紙は、これをイギリス人口6,000万人に当てはめると、イギリスのvCJDによる死者が7,200人になると報じている(Analysis of organs predicts possible 7,000 CJD deaths,Independent,9.20)。ただ、虫垂を使った検査の信頼性は不明確で、百万人に一人という数字が信頼できる指標となるかどうか不確かだという。研究チームは、正確なデータを得るためには扁桃リンパ節から得られた組織の大規模な検査が必要だと言っている。保健省は、病院で得られる多数の扁桃腺の研究を準備中という。

 現在までのところ、イギリスでのvCJD(及び多分vCJDによる者も含む)による死者は115人で、ほかに多分vCJDとされる生存者が12人発見されている。vCJDについては不明確なことが多く、今後の発生数を予測することは非常に難しかった。すべてのvCJD患者が人口の40%ほどを占める特定の遺伝子型をもつことは知られているが、他の60%は逃れられるのか、それとも潜伏期間が長いだけなのか、分かっていない。どれほどの量の病源体に曝されれば感染・発病するのか、汚染された食品がどれほど消費されたのかも、確実なことは何も分かっていない。

 chief medical officerSir Liam Donaldsonは、「vCJDについては、未だ分かっていないことが非常に多い。この研究は感染の証拠を提供するが、それから発生の規模に関する結論を引き出すのは大変難しい。病気の理解を改善し続けることが必要だ」と言っている(Tonsil tissue used for CJD test,Guardian Unlimited,9.20