農業情報研究所

HOME グローバリゼーション 食品安全 遺伝子組み換え 狂牛病 農業・農村・食料 環境 ニュースと論調

EU:屠殺場廃棄物・斃死牛処理、狂牛病検査に新国家援助ルール

農業情報研究所(WAPIC)

02.12.2

 11月27日、欧州委員会は、屠殺場廃棄物及び斃死家畜の処理や狂牛病等伝達性海綿状脳症の検査のための費用に関連した国家援助(EU加盟国の、EUレベルの援助と無関係な国独自の援助)に関する新たなガイドライン(EU法上の地位は必ずしも明確ではないが、事実上、加盟国の国家援助を禁止したり、承認したりする基準となっている)を採択した。新たなガイドラインのテキストは近々EU官報と欧州委員会農業総局のウエブ・サイトで公表され、2003年1月1日から施行される。加盟国のこれら分野における政策が非常に多様で、加盟国間の競争条件を著しく歪めると判断されたために、新たなガイドライン策定となった。

 新たなルールの下では、いかなる種類の屠殺場廃棄物の処理費用のための国家援助も許されない。例外的に、2003年に生産される特定危険部位と肉骨粉の処理費用の50%までの国家援助が許される。欧州委員会は、特定危険部位処分の費用の100%国家援助を認めてきたが、これは競争条件の深刻な歪みをもたらし、廃止されねばならないと言う。

 検査については、2003年1月1日以降に人間消費用に屠殺される牛のBSE検査費用は、最大限40ユーロしか認められない。これは検査キット、検査対象の採集・輸送・検査・貯蔵・廃棄の全費用にかかわる。EU内で最も競争力のある検査キット供給者の価格をカバーするにはこれで十分であり、この制限は無用な競争条件歪曲を回避し、高価な検査キット供給者に圧力をかけることになるという。その他の検査(斃死牛や羊の検査)については、従来どおりに100%国家援助を認める。

 農場での斃死牛については、除去(集荷・輸送)費用の100%の国家援助を認めるが、処理(貯蔵・加工・廃棄・最終処分)費用は75%までしか援助を認めない。ただし、食肉部門の負担で原資が調達される場合には100%援助も認める。斃死牛に関する国家援助ルールは初めて定めるものであり、加盟国が既存のシステムをこれに合わせるために、2003年末までは100%援助を認める。

 従来、この分野で手厚い援助を行なってきた国では反発が予想されるが、フィシュラー農業担当委員によれば、新たなルールは競争条件を歪めることなく人々の健康と環境の保護の必要性を考慮したものである。生産チェーンのなかで最も弱く、狂牛病危機で大きな打撃を受けた農業者には特に配慮し、家畜取引と屠殺場のレベルでの斃死牛への国家援助禁止は輸送・屠殺の間の家畜の扱いの改善を刺激することになると言う。さらに、新たなガイドラインは、家畜が狂牛病などに感染した場合の農業者に対する国家援助の可能性やその損失補償の法的義務に影響を与えるものではなく、一般的検査義務や健康な動物からも危険部位を除去することからくる永続的費用負担に関連するものであると注意を促している。

 European Commission:New state aid rules for slaughterhouse waste, TSE tests and fallen stock(11.27)