農業情報研究所

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プリオン理論を実証、治療に役立つ可能性ースイス研究者ー

農業情報研究所(WAPIC)

03.4.5

 4月4日付のNature News(Prion principle proved)が、蛋白質が結合して狂牛病を発生させるというプリオンに関する理論がスイスの研究者により立証されたと報じている。研究は、”Cell”誌の4月4日号に発表された(Meier, P. et al. Soluble dimeric prion protein binds PrPSc in vivo and antagonizes prion disease. Cell, 113, 49 -60, (2003))。この研究について、Nature Newsは次のように伝えている。

 動物の病気においても、その人間版である変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)においても、変形したプリオンが脳内に凝集し、それを破壊することになる。変形プリオンが正常プリオンにくっつき、これを変形させると考えられていたが、今までのところ、病気の動物でこの接触が起きるのを確認した科学者はいなかった。

 ところが、この研究を行なったスイス・チューリッヒ大学病院のアドリアーノ・アグッチと彼の同僚は、その現場をとらえた。彼らは標識を付けた新たな人工的なプリオンのバージョンをもつ遺伝子操作マウスを作った。これにより、それを細胞から分離しやすくなった。

 彼らは、このマウスの脳に狂牛病類似の羊のスクレイピーに関係するプリオン蛋白質を注入した。予想通り、人工プリオンが変形プリオンに附着するのが発見された。

 カリフォルニア大学サンフランシスコ校のプリオン研究者・ミカエル・スコットは、これは「正常な状況を模擬する」ものと言っている。結合した蛋白質はプリオンとプリオンの接触を防ぐ薬の審査、あるいは関係する他の蛋白質の同定に役立ち得る。彼は、「このプロセスがどのように起きるのかを解くのに真に役立つ可能性がある」と言う。

 人工プリオンは新たな治療法の基礎になるかもしれない。研究チームは、人工プリオンは変形プリオンにくっつくとしても、それ自身は変形されることに抵抗したと言う。このプリオンをもつマウスは、これをもたないマウスよりも、少なくとも3ヵ月長生きした。

 人工プリオンは正常なプリオンに人間の抗体を融合させることで作り出された。これは蛋白質を溶融可能にし、細胞のマッシュからの抽出を容易にした。

 プリオン研究者は、既に変形プリオンの増殖を止め、vCJDを遅らせるために、様々な薬や抗体を使うことを試みている。カナダ・トロント大学で脳の病気を研究するネイル・キャッシュマンは、「今のところ、我々には人口プリオンが抗体よりも有効なのかどうかわからない」と言っている。