新研究、異常プリオン蓄積は病原にならない、転換過程が問題

農業情報研究所(WAPIC)

03.11.4

 牛海綿状脳症(BSE)、羊のスクレイピー、人のクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)などの致死的な海綿状脳症は、神経細胞蛋白質・プリオンが変型した異常プリオンの「蓄積」が引き起こすと考えられている。難分解性の異常プリオンが正常プリオンに接触すると次々と正常プリオンを異常プリオンに変型させ、それが蓄積されることで発病すると考えられてきた。しかし、異常プリオンの蓄積を防ぐ治療法は大きな成果を上げていない。英国の研究者が、病気は異常プリオンの蓄積そのものではなく、正常プリオンが異常プリオンに転換する過程に病原があるのではないかと示唆する新たな研究成果を発表した(Giovanna Mallucci, John Collinge et al.; Depleting Neuronal PrP in Prion Infection Prevents Disease and Reverses Spongiosis,Science,No.5646,2003.10.31)。

 研究者は、生後12週で正常プリオンを失う変異マウス株を育成した。これらのマウスも普通のマウスも異常プリオンに感染し、すべてCJDに似た病気を発病した。ところが、変異マウスの病気は正常プリオンを失った12週間後から回復したが、普通のマウスはすべて死んだ。変異マウスの脳には異常プリオンが蓄積したが、健康なままであった。

 この結果は、異常プリオン自体に問題があるのではなく、正常プリオンと異常プリオンの間の転換過程に問題があることを示唆している。研究者は、病気の決定的原因となる中間段階があると結論している。将来、脳内の正常プリオンを減らす治療法が考えられるという。

農業情報研究所(WAPIC)

グローバリゼーション 食品安全 遺伝子組み換え 狂牛病 農業・農村・食料 環境