BSEの人間版(vCJD)、血液による伝達の可能性に新たな証拠
04.2.9
BSE(牛海綿状脳症、狂牛病)に感染した牛の組織を食べることで人間に伝達したとされている変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)が血液を通して伝達される可能性があるかもしれない。その有力な証拠を提供する二つの研究報告が発表された。いずれも英国の国際医学雑誌・The Lancet誌の最新号に発表されたものである。
一つは、英国国家血液サービス等に所属する4人の研究者による研究(*)で、孤発型CJDが輸血を通してヒトからヒトに伝達することを示唆する疫学的証拠はないが、これはvCJDには適用できない可能性があるとして、vCJDが輸血を通して伝達するかどうか確認しようとしたものである。後にvCJDにかかった15人の献血者から血液成分を受け取ったと確認された48人について調べたが、そのうちの一人が、献血者がvCJDを発症する3年半前に提供した赤血球を受け取った6年半後にvCJDを発症していた。この患者が食事によりBSE病源体を取り込んだ可能性がないわけではないが、患者の年齢は、大部分のvCJD患者の年齢をはるかに超えており(vCJDは、一般的に他のCJDよりも若い層がかかるのを一つの特徴としてきた)、この患者が輸血以外でvCJDになる確率は1万5千分の1から3万分の1しかないという。このことから、研究は、この感染が輸血から起きた可能性が高いと結論している。
もう一つは、フランス原子力エネルギー庁医療研究部の研究者による研究(**)で、vCJD患者のリンパ網内組織に異常プリオン蛋白質が認められてきたことに注目、それならばこの病気は手術や血液製品の利用により伝達する可能性があるとして、医原性ルートによる霊長類動物への病源体伝達の可能性を評価することを狙い、その様々な組織における分布状態を経口感染の場合と比較した。BSE病源体を含む組織を経口または静脈への注入で与えられたマカークザル(アジア、北アフリカ産の短尾のサル:アカゲザル、クロザル、ニホンザルなどを指す)の組織感染の程度は、どちらのルートで感染しても類似であった。これは静脈を通しての伝達の効率が高いことを示すもので、静脈注入による伝達が輸血を受けたvCJD患者へのあり得る伝達経路とみなされるべきことを意味するという。研究者は、静脈注入により感染した人間の医原性vCJDは経口の場合と同様な公衆衛生上の懸念を生むと、血液・臓器提供や手術に関する同じような予防措置の必要性を指摘している。
*C A Llewelyn, P E Hewitt, R S G Knight, K Amar, S Cousens, J Mackenzie, R G Will ;Possible transmission of variant Creutzfeldt-Jakob disease by blood transfusion,The Lancet,Volum 363,Number 9407,04.2.7
**C Herzog, N Salès, N Etchegaray, A Charbonnier, S Freire, D Dormont, J-P Deslys, C I Lasmézas;Tissue distribution of bovine spongiform encephalopathy agent in primates after intravenous or oral infection ,The Lancet,Volum 363,Number 9407,04.2.7
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15 blood donors developed vCJD,Guardian,04.2.6
農業情報研究所(WAPIC)