イタリアで新型BSE二例、人間の孤発型CJDに似る―新研究

農業情報研究所(WAPIC)

04.2.17

 イタリアで確認されたBSEの2例が新型のものであり、脳の病変は、今までのところ原因不明とされている人間の孤発型クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)患者の病変と類似してることをイタリアの研究者が明らかにした。孤発型CJDはBSEが人間に伝達したたとされる変異型CJD(vCJD)に比べてと発生件数もはるかに多く、どこでも一般的に見られる病気である。新型BSE自体が自然発生的なものである可能性もあるが、食べ物を通して伝達する新型の病気である可能性も否定できない。BSEとvCJDに認められているような関連性が新型BSE(研究者はBASEと名付けた)と孤発型CJDの間に存在する可能性も考えざるを得ないだろう。ひょっとすると、原因不明のCJDがこのBASEの牛を食べることからきた可能性もあるわけだ。もちろん、この点は今後の研究に待たねばならないが、人間は、vCJDに勝る不可解な「プリオン病」の悪夢に、改めて悩まされることになるのだろうか。

 この病気は、イタリアで屠殺された15歳と12歳の外見上は健康な高齢牛に発見された。脳にはアミロイド斑が見られることから、牛アミロイド型海綿状脳症(BASE)と名付けられた。アミロロイド斑は人間のアルツハイマー病の指標となり、孤発型CJDの患者に見られるが、通常のBSEの牛には見られない。この型は多くの高齢牛に見られる型とも違い、脳内のプリオンの蓄積部位も異様で、脳幹よりも嗅球、視床などに多く見られるという。

 それにしても、この発見は、プリオン病に関するなぞを一層深める。DNAもRNAももたない蛋白質であるプリオンがなぜこのように多様な”株”を持つのか。これはずっと未解明な謎となっており、これらの病気が、なお発見されてはいないウィルス、あるいはその卵であるウィルノではないかというウィルス病源体説が生き残る有力な根拠を提供してきた。もしこれが正しければ、我々は、まだ次々と新種の、病源体も特定できない致死的なウィルス病に悩まされることになる。この発見は、CJDとの関連性は別としても、どのみち我々にとっては悪いニュースとしか言えない。

 研究は全米科学アカデミーのProceedings誌に発表される(印刷前にオンライン版で発表*)。

 *Salvatore Monaco et al,Identification of a second bovine amyloidotic spongiform encephalopathy: Molecular similarities with sporadic Creutzfeldt-Jakob disease,04.17

 関連情報
 狂牛病関連病はvCJDだけではない、孤発型CJDにも関連の可能性,02.11.29

農業情報研究所(WAPIC)

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