全米食肉輸出連合会、朝日新聞一面ぶち抜きの米国牛肉安全広告

農業情報研究所(WAPIC)

04.7.20

 全米食肉輸出連合会が、20日付朝日新聞の一面ぶち抜きで米国牛肉は安全という広告を出した(少なくとも日経、毎日には載っていない)。

 ”正しい知識を得ることが、BSE問題の「正解」です”の標題の下、先ず「@牛肉の安全性について」の三つの設問とYES、NOの選択解答欄があります。

 ・BSEの原因である異常プリオンが蓄積するのは、脳や脊髄などの特定部位だけである。YES NO 

 ・アメリカの食肉加工現場では、政府の検査官の監視のもと、特定部位を確実に除去している。YES NO

 ・除去した特定部位が牛肉に混入しないように、アメリカでは加工の作業手順が決められている。YES NO

 [このホームページのご覧の皆さん、答えて見て下さい]

 広告では、もちろん、「答えは、すべてYES。アメリカン・ビーフは、安全を最優先に生産されています」

 そのあと次のような講釈が続く。

 「BSE問題について考えるときにまず知っておかなければならないのは、BSEの原因である異常プリオンたんぱく質が、牛の体内のうち特定部位と呼ばれる脳や脊髄などにしか蓄積しないということ。私たちがふだん食用にしている牛肉や内臓には、もともと危険はありません。しかも、異常プリオンは時間をかけて脳に蓄積していくため、異常プリオンの蓄積が少ない若い牛の脳を検査してもBSE感染は検出できないのです。つまり、全頭検査をしても、すべてのBSE感染牛を発見できるとはかぎらないのです。

 検査に「完全」や「絶対」がありえない以上、食の安全を確実に担保できる唯一の方法は、特定部位の除去を徹底することです。アメリカでは食肉加工の過程で、政府の検査官の立ち合いのもと、全頭について決められた特定部位が確実に除去されています。また、食肉加工の作業中に特定部位が牛肉に混入しないように、混入の可能性が少しでもある作業手順は一切禁止されています。こういった法的規制以外にも、現場ではより厳しい自主規制が設けられています。

 つまり、アメリカにおいては、もし仮にBSE感染牛がいたとしても、異常プリオンの含まれる牛肉が食用に回ることはないのです。もともと検査はBSEの現状を把握し、拡大しないように監視するための手段の一つにすぎません。リスクそのものである特定部位を除去してしまえば、それがいちばん確実な安全策。科学的根拠に基づいて適切な対策をとっているからこそ、アメリカン・ビーフは安全なのです。」

 [このホームページをご覧の皆さん、この講釈に不適切な部分がないかどうか、よくよく考えてみてください。その上で、次の最後の設問に答えて見てください。ヒントは、食品安全委員会BSE対策見直し、結論を先延ばし、リスク評価は支離滅裂,04.7.19などの参照をお勧めします。]

 「あなたは、アメリカン・ビーフを食べたいと思いますか。YES NO」 

 なお、米国マスコミがBSE問題に寛容なのは(最近では必ずしもそうではなさそうですが)、食肉業界から多額の広告料を受け取っているからだという一説があります。日本のマスコミのBSE問題への切り込みが手ぬるく、政府官僚や御用学者の高説の受け売りになりがちなのは、別の話と信じております。