ソウル大学チーム、BSE抵抗性牛の大量クローニングに前進

農業情報研究所(WAPIC)

04.8.20

 昨年12月、BSE抵抗性の牛のクローニング成功を発表して話題となったソウル大獣医学科の黄禹錫教授の研究チームが、BSE抵抗性子牛を大量にクローンすることになりそうだ。チームは、江原道家畜研究センターとの間で、この研究を加速するために牛と施設を提供する協定を結んだという(Mad Cow Disease-Resistant Calves Due en Masse,The Korea Times,8.18)。

 この協定の下、クローニングに不可欠な代理母牛300頭と施設を提供するために、江原道は2006年までに37億ウォン(1ウォン=約10円)を支出する。ソウル大学は飼育場を一つしかもたないために、これは研究促進に大きく貢献するという。

 BSEからわが身を護ることだけに汲々としている人々には恩恵かもしれない。チームはこの恩恵を売ることができるかもしれない。だが、こんな牛ばかりが飼育されることになれば、家畜種多様性はどこへ行ってしまうのだろうか。BSEを克服したと思ったら、別の制御不能な新たな災厄が生まれるかもしれない。

 これもすべて、わが身さえ安全なら、動物の幸福や健康などどうでもよいという最近のBSEをめぐる論調の反映なのだろうか。目先の安全、というより「安心」を確保する対症療法(検査、特定危険部位除去)ばかりに関心が集まってきた。肝心なことは、BSEのような災厄を生まないような健全な牛の飼育方法を取り戻すことだということがすっかり忘れられている。

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