フランスの山羊、BSEと正式確認

農業情報研究所(WAPIC)

05.131

 欧州委員会は28日、かねてBSEの疑いがもたれていた2000年生まれのフランスの山羊(注1)が正式にBSEと確認されたと発表した(注2)。山羊がBSEに感染することは実験的には知られていたが、自然の条件の下での感染の確認は初めてとなる。この確認にもかかわらず、欧州委員会は山羊のBSE感染は非常に稀と見る。消費者保護についても、このことあるを想定して予防原則に則った対策を講じてきたから、安全対策の変更も当面考えないという。しかし、確定的なことは今後の調査・,研究に待たねばなfらないだろう。

 山羊のBSEはどれほど広がっているのか? 

 欧州委員会は、この感染山羊が孤立した例なのかどうかを確定するために、最低6ヵ月間の検査拡充(健康な山羊20万頭を検査)を提案するというが、BSEはほとんど発見されないだろうと見る。EUでは普通、山羊は数年生きるだけだ。現在の山羊の大部分は肉骨粉が全面禁止された01年1月以後に生まれたもので、一般的には肉骨粉が感染源と考えられるから、感染が発見されることはほとんどなかろうと言う。

 フランス食品衛生安全庁(AFSSA)も、1)フランスで伝達性海綿状脳症(TSE)陽性が発見された山羊は、03年に11,174頭を検査して3頭、04年にも5,756頭を検査して4頭にすぎなかったこと、2)90年から03年までのTSEの株について、山羊の4標本でマウスへの伝達が起きたにすぎず、これらの株の中でもBSE類似の特徴を呈するのは今回の一例だけだったことから、現段階では山羊のTSEは稀で、中でもBSE類似の株の存在も稀と見る。しかし、これらの結果は動物群全体を代表するサンプリングではなく、無作為抽出に基づくEUのサーベイランス計画から出てきたもので、「これらのデータは非常に部分的な指標を与えるだけで、厳密には確かな感染頻度を決めるための材料にはなり得ない」と用心深い。また、今回の確認は、山羊よりはTSE発生率が高い羊への注意も一層高めることになると言う。

 消費者の安全性への影響

 小反芻動物にあり得るBSEから消費者を保護するために、EUはここ数年来、肉骨粉の形での動物蛋白質による飼育の禁止、脳・脊髄・腸の一部などの特定危険部位(SRM])の食料・飼料からの排除、スクレーピー(TSEの一種で、BSEとは異なり人間には伝達しないとされる羊と山羊の病気)感染動物群の廃棄、監視・検査計画などの予防的措置を講じてきた。欧州委員会は、今回の確認にもかかわらず、山羊の乳・チーズ・肉の消費のいかなる変更も勧めないと言う。ただ、山羊の肉と肉製品の定量的リスク評価は既に欧州食品安全庁(EFSA)に諮問しており、今年7月までには何らかの回答が出ると予想されている。

 AFSSAも、今回の確認で今までの分析・意見が変わることはないと言う。それは、小反芻動物においてはBSE感染性を持つ部位は牛よも広範囲に広がっており、大容量での実験的感染では血液やリンパ組織にも感染性が認められることから、SRMだけでなく筋肉にも感染性があり得ることを強調する。従って、消費者保護のためには、「感染していないことが証明できない動物」を食料から排除すべきで、それを可能にする最も確かな方法は、差し当たり各枝肉の検査、中期的には、個体識別・追跡の可能性と群の特徴に関する十分なデータの確保を前提に、群全体に感染なしの保証を与える方法の開発も考えられると言う。 

 この山羊のBSEはどこからきた?

 今回の確認はBSEの本性にかかわる問題も提起している。AFSSAは、BSE株が山羊に見出されるのはどう説明すべきかと問う。牛類似の方法で飼料を通して感染したか、山羊の群の中にBSE類似の株が存在するかだが、現状ではどちらとも結論できないと言う。

 なお、フランスでは、2000年以後生まれの牛のBSEは1件も発見されていない。この山羊が牛と同様な飼料を通じて感染したとすると、2000年以後生まれの動物の初のBSE感染例となる。

 (注1)農業情報研究所(WAPIC)、フランスで山羊のBSE確認、EUレベルの専門家委員会の評価へ,04.10.29
 
(注2)European commussion,Case of BSE in a goat confirmed: Commission extends testing programme,05.1.28
 (注3AFSSA,Confirmation de la suspicion de la présence d'une souche similaire à celle de l'ESB chez une chèvre abattue en 2002 (28 janvier 2005):Eléments de synthèse et d'analyse