OIEのBSE基準改正案、骨なし肉の無条件輸出入を認める条項について

農業情報研究所(WAPIC)

05.3.29

 先日、5月の国際獣疫事務局(OIE)総会で論議されるOIE・BSE基準の改正案が公表されておらず、詳しいことは分からないと書いたが(台湾、カナダ産牛肉も解禁か OIEの新BSE貿易基準案で早急な立場確立が必要,05.3.28)、米国農務省動植物保健検査局(APHIS)の輸出入センターがコメントを求めるために原文を掲載しているのを見つけた(http://www.aphis.usda.gov/vs/ncie/oie/)。

 他の部分について今は触れる暇がないが、日本で騒がれている骨なし肉の輸出入を無条件で認めるという点についてのみ確認しておく。

 この案のBSEに関する章の第1条の1)に、「次の商品及びこれら商品から製造される、また牛由来の他のいかなる組織も含まないすべての製品の輸入または運送を許可するとき、獣医当局は、輸出国・地域・区画の牛集団のBSEリスクのステータスと無関係に、BSEに関連したいかなる条件も要求すべきでない」とする商品と製品が掲げられているが、その中に「屠畜に先立ち、頭蓋の穴に圧搾空気またはガスを注入する装置によるスタンニングまたはピッシングを受けなかった牛からの脱骨骨格筋肉(機械的分離肉を除く)」と、同様にスタンニングやピッシングを受けなかった牛からの「血液及びその副産物」が付け加えられている。

 なお、この点に直接関係するものではないが、この改正案に対し、全米レンダリング協会がBSEリスクのステータスの決定に関係するコメントを出しているので紹介する(http://www.rendermagazine.com/Decemer2004/InternationalReport.html)。

 それは先ず、BSEリスクのステータスを従来の5分類から3分類に簡素化する点について、様々な操作の余地が減ると歓迎している[自分の首を閉めることもあり得ないではないが]。その上で、BSEコードは、

 ・統計的に有意で科学に基づくサーベイランス・プログラムの指針を提供すべきで、多くの国はサーベーランスに極端に力を入れすぎていて[米国のサーベイランスはなっていないという]誤解を招いている、

 ・肉骨粉に触れる場合には[豚や鶏の肉骨粉は問題がないとはっきりさせるために]反芻動物製品についての言及であることを明確にすべきである、

 ・[米国は個体識別・トレースの統一システムを持たなくて無理だから]擬似患畜の確認・監視・追跡を要求する規程を明確にし、不必要な廃棄処分の必要性を示唆するような言い回しはやめるべきである、

 ・[米国レンダリング工場のプリオン不活性化措置は国際基準を守っておらず、それでリスク国と評価されては堪らないから]レンダリングの温度・圧力は国産牛にBSEが存在するとわかった国にのみ要求されるべきである、

 などとクレームをつけている。[ ]内は筆者が勝手に付けたしたものである。

 これは、レンダリング業界のみならず、米国全体の利害にもかかわるだろう。骨なし牛肉の問題はその一例にすぎない。こんな身勝手が国際基準を作り上げていくのだと知るべきである。

 それにしても、検討に多大な時間・労力を要するこんな改正案を、総会も押し迫った4月初めまで公開しないという日本農水省は、消費者の意見など真面目に求めるつもりがないのだろう。この点は米国にもはるかに劣ると言えそうだ。