EU SRM・脊椎を除去すべき牛の月齢引き上げへ Tボーンステーキも食卓に戻る

農業情報研究所(WAPIC)

05.10.6

 EUの食品チェーン・動物保健常設委員会(SCFCAH)が10月5日、牛肉から脊椎を取り除かねばならない牛の最低月齢を12ヵ月から24ヵ月に引き上げるという欧州委員会の提案草案を承認した。欧州議会の審査を経て、2ヵ月以内に欧州委員会が最終案を採択するという。これは、2001年3月以来禁止されてきたフィレンツェ風ステーキ、Tボーンステーキなどの骨付き肉の一部解禁への道を開く。欧州委員会は、この最低月齢の引き上げは、牛肉の安全性を損なうことなく、EU農民と食肉産業の競争力の強化に貢献、またEUで生み出されるSRM廃棄物の減少につながると言う。

 Commission proposal to allow return of beef on the bone backed by Member States
 Questions and Answers on changing BSE rules for beef on the bone

 欧州委員会は、今回のルール変更の背景を、過去数年のBSE陽性牛の数は着実に減少、陽性牛の平均年齢も大きく上昇していると説明する。30ヵ月以上の健康なと殺牛でBSEが発見されたケースは2001年以来1件もなく、2000年以来の4100万頭の検査データは、現在発見されるいかなる感染牛も、厳格なBSEルール、特に1990年代のEUレベルでの肉骨粉禁止の導入以前に感染したことを示唆していると言う。

 このような発生動向の変化を受け、欧州委員会は今年7月、将来のルール変更(規制緩和)を見通すTSE(伝達性海綿状脳症)ロードマップ」(欧州委、EUの狂牛病措置改変に向けてのロードマップを採択,05.7.18)を採択しているが、今回の変更は、その具体化の第一弾ということになる。

 EUは、2000年秋、フランス発の狂牛病パニックが欧州全体を襲うなか、2000年10月に脊椎を全加盟国のSRMに指定(英国やフランスではそれ以前からSRMとされていた)、12ヵ月以上の牛の脊椎の除去・廃棄を義務付けてきた。こうなると、Tボーンステーキやフィレンツェ風ステーキなどの骨付き肉は、一般的には22−30ヵ月の牛から生産されるから、すべて最終製品から脊椎が取り除かれねばならない。この月齢の牛からの骨付き肉自体が禁止されたわけではないが、脊椎を完全に除去するような切り分けは技術的に不可能として、これらの製品の生産が禁止された。

 しかし、上記のようなBSE発生動向の変化を受け、欧州委員会は除去すべき中枢神経組織が由来する牛の月齢の変更を欧州食品安全機関(EFSA)に諮問した。EFSAは今年4月、2001年以来、35ヵ月以下のBSEのケースは4件にすぎず、30ヵ月以下のケースは1件もないし、感染が発見される牛の最低月齢は着実に40ヵ月以上に上がっていることなどを考慮、これら組織除去の”考えられる、しかし絶対的ではない”安全限界は30ヵ月であろう、それ以下の月齢では高度の安全性が保証されるという意見を出した(欧州食品安全庁、中枢神経組織SRMを除去すべき牛の年齢引き上げに慎重意見,05.5.27)。

 欧州委員会はこの意見を考慮、最高度の消費者保護を保証するために、最低月齢を24ヵ月とすることを提案した。24ヵ月以上の牛はそれよりも若い牛よりも確認が容易だし、24ヵ月はと畜場での獣医による他の点検が行われる区切りの月齢であることも考慮した。この月齢で区切れば、脊椎除去を確保するための一層有効なコントロールが可能になり、農民や食肉産業の不必要な追加負担も防ぐことなると言う。

 今後、このようなSRMのリストの変更が次々と打ち出されてくるだろう。欧州委員会は、獣脂、コラーゲンとゼラチンの加工基準の緩和も考慮中という。ロードマップは、その他、擬似患畜の殺処分、飼料規制、モニタリング(BSE検査)・プログラム、地理的BSEリスク評価、英国からの輸出規制などの変更も検討するとしている。英国の牛と牛肉の輸出に関する現在の制限は、既に解除の方向が示されている(BSE: Prospects for lifting current restrictions on the trade of cattle and beef from the UK,05.9.28)。