米国外交官 韓国とのFTA交渉開始の交換条件として米国産牛肉輸入再開を求める

農業情報研究所(WAPIC)

05.11.9

 韓国マスコミ報道によると、ソウル駐在米国政府外交官トップが8日、2003年12月の米国での狂牛病(BSE)発生以来韓国政府が取ってきた米国産牛肉の輸入停止の解除が韓米自由貿易協定(FTA)交渉開始を可能にすると語った。彼は、90分間のウエブ・チャット会議の間に、韓国インターネット・ユーザーからの質問の答え、「我々がFTA交渉を開始するためにはこの問題が解決される必要がある」と語ったという。

 US Links Beef Import to FTA With South Korea,The korea Times,11.9
 http://times.hankooki.com/lpage/nation/200511/kt2005110822284411950.htm

 これが米国政府の公式な態度かどうかは分からない。しかし、十分にあり得ることだ。FTAによる巨大米国市場の優先的開放という「アメ」と引き換えに、政治経済全側面における「米国基準」を交渉相手国に押し付けようとするのがブッシュ米国政府のFTA戦略だ。最終的には、政治的・経済的価値観を共有する国々の同盟のネットワークを作り出し、テロ醸成基盤を除去しようとしてきた。この中で、多くの途上国が拒む米国産遺伝子組み換え(GM)作物・食品の受け入れも強要しようとしてきた。

 2003年6月、アラブ諸国の中でも最も重要とされたエジプトをFTA交渉相手のリストから外してしまった。理由は、同年5月のEUのGM作物規制をWTOルール違反とする提訴国に米国と共に名を連ねたエジプトが、EUとの関係の悪化を恐れ、共同提訴を降りてしまったことにある。このために、エジプトは他のアラブ諸国が享受することになるであろう米国市場への特恵アクセスを失うことになっていまった。交渉再開の動きは、最近になって漸く現れたばかりだ。

 同じ構図が、今度はBSEをめぐって繰り返されようとしている。これは十分にありそうなことだ。現韓国政府は米国との早期のFTA交渉開始を望んでいる(S. Korean Envoy to US Pledges Efforts for FTA,The korea Times,10.12;http://times.hankooki.com/lpage/200510/kt2005101222350312070.htm)。

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