米国農務省 アラバマの牛の狂牛病疫学調査のために死体掘り起こし

農業情報研究所(WAPIC)

06.3.16

  米国農務省(USDA)動植物保健検査局(APHIS)が15日、エームズの国家獣医局試験所のウエスタン・ブロット検査で米国3例目の狂牛病(BSE)陽性が確認されているアラバマの牛が免疫組織化学(IHC)検査でも陽性の結果が出たと発表した。この牛が狂牛病に罹っていたことが改めて確認されたことになる。

 News Release:SECOND USDA CONFIRMATORY TEST RESULTS POSITIVE FOR BSE,05.3.15

 また、この発表によれば、APHISは現在、この牛の出生地を突き止めるための疫学調査を行っている。ウエスタン・ブロット検査で陽性を確認したときの最初の発表と同様、この牛はアラバマの当該農場には1年もいなかったとしている。そして調査の第一歩として、この牛の種類と年齢を直接調べ、また耳標などあらゆる識別指標をチェックするために、農場に埋められてしまった死体を掘り起こすという(この牛は獣医が検体採取後、農場で埋められた)なんともお粗末な話だ。

 新たに、最初はSanta Gertrudis種と報告されたこの牛は、現在は(多分Santa Gertrudisかこれと類似の種と交雑した)赤牛雑種と考えられていることも明らかにした。その他の新しい事実は報告されていない。

 なお、日本の厚生労働大臣は14日の閣議後記者会見で、米国の3頭目の狂牛病確認の米国産牛肉輸入再開に向けた動きへの影響について、「10歳を超えた牛のようですから、今までの科学的知見からすれば、全く関係する問題ではないと思っております」と発言した。

 厚生労働広報室:閣議後記者会見概要
 http://www.mhlw.go.jp/kaiken/daijin/2006/03/k0314.html

  しかし、米国のズサンな飼料規制、月齢識別や感染牛発見の能力の限界を考えれば、危険な感染牛からの牛肉・内臓(しかも、背骨はともかく、簡単には見分けられず、付着を完全に防ぐことも難しい脊髄など特定危険部位が含まれるかもしれない)が輸入されないという保証はない。3例目の確認とこれをめぐるUSDAの動きは、米国のリスク管理全体にかかわる問題を改めて浮き彫りにするものだ。

 3頭目の狂牛病の発見は、米国でさえ、検査・発見のためのシステムの欠陥や出生地・年齢確認の困難にかかわる疑問を掻き立てている。3頭目の狂牛病が発見されたのは、起立不能・歩行困難な牛を発見した獣医が、たまたま”自主的”に検査に差し出したからにすぎない。これは”義務”ではないから、発見された感染牛は氷山の一角にすぎないかもしれない。たまたま発見されても、牛の出生地や出自牛群を突き止めるのは困難を極める。年齢さえ正確には分からない。これでは、狂牛病発生パターンの正確な把握ができないし、感染牛が食用に出回ってしまう可能性も排除できないということだ。

 厚生労働大臣はこのような問題の認識を完全に欠いているように思われる。

 Third mad cow case in US raises questions about testing,Christian Science Monitor,3.15
 http://search.csmonitor.com/2006/0315/p02s01-uspo.html

  関連情報
 米国 新たな狂牛病確認 擬似患畜は? 韓国は輸入再開延期へ,06.3.14