欧州議会 EUの狂牛病基本規則修正に同意 欧州委は検査数削減と飼料規制の緩和へ

農業情報研究所(WAPIC)

06.5.18

 EUの欧州議会が17日、EUの伝達性海綿状脳省(TSE)に関する基本規則を修正する提案を採択した。

 European parliament:Mad cow disease: ten years later, vigilance the watchword,06.5.17

 この修正は、昨年7月に欧州委員会が発表したTSE ロードマップ(*)に沿うもので、閣僚理事会の承認を経て、今年の夏休み前には実施されようという。キプリアヌ保健・消費者保護担当委員は、このロードマップで概略が示された一定の狂牛病(BSE)措置の変更の法的枠組が提供されたと歓迎している(**)

  * The TSE Roadmap,05.7.15
   http://ec.europa.eu/comm/food/food/biosafety/bse/roadmap_en.pdf
  **Commissioner Kyprianou welcomes Parliament vote to amend EU rules on BSE.06.5.17

 この採択を受けた欧州委員会は、次のような規則修正があり得るとしている。

 (1)義務的なBSE検査数の削減

 ロードマップは、24ヵ月齢以上のリスク牛(死亡牛、緊急と殺牛、生前検査でBSEが疑われた牛)すべてと30ヵ月齢以上の通常と殺牛のすべての検査を義務づける現行規則を、@検査が義務付けられる通常と殺牛と死亡牛の月齢を引き上げるか、ABSE発生率に関する十分な統計的情報が得られるようになった年以降に生まれた牛の監視を減らし、限定された情報しか得られない(最近の)出生年の牛に監視に重点を置くように改めることで、義務的検査数を減らすことが考えられるとしていた。

 欧州議会は、サーベイランスを強化した、年々のサーベイランス・プログラムに24ヵ月齢以上の緊急と殺牛と30ヵ月以上の通常と殺牛の全頭検査を含めることをもっと明確に規定することを望んだとしているが、欧州委員会は、一定の条件の下でサーベイランスの対象を絞り込むことと併せで、義務的検査数を減らすと言う。

 (2)反芻動物飼料における魚粉の禁止の緩和

 欧州委員会は、反芻動物飼料中に少量の魚粉が存在することを許す許容レベルの導入を提案する。現在は、非反芻動物飼料には厳格な条件での魚粉利用が認めらているとはいえ、反芻動物飼料への魚粉利用は禁止されている。この禁止の緩和は、反芻動物飼料と非反芻動物飼料の一定の交叉汚染を許すことにより、一層リスクベースの、実行可能なルールにするのだと言う。

 欧州議会は、動物の自然な食料ではない動物蛋白質を反芻動物に与えることを禁止する現行のフィードバンを支持したが、欧州委員会との妥協策として、若い反芻動物の飼料に魚由来の蛋白質の利用を許すことにしたと言う。

 以上は、主としてBSE措置の経済的コスト削減を目的とする欧州委員会の規制緩和措置となる。しかし、欧州議会は、規則の変更に伴う他の措置の管理の一層の厳格化や科学委員会による変更の一層詳細な正当化を求めた。欧州委員会は、一定の分野での規制強化も考えているという。例えば、

 (3)特定危険部位(SRM)部位変更の管理の厳格化

 従来は規則の付属書に掲げられていた一定のSRMのリスト(脳、扁桃、脊髄)を規則本体に書き込むこととした。これは、これらのSRMに関するルールのいかなる変更も、委員会の決定で行うことができず、欧州議会がかかわる”共同決定”手続に服することを意味する。SRMの決定はより厳格な手続に服することになる。

 (4)機械的分離肉(MSM)に関する措置の強化

 管理されたリスクまたは不明なリスクの国の反芻動物のすべての骨がMSM生産のために利用できない。現在は脊椎の利用が禁止されているだけだ。これは、欧州委員会も今年5月の国際獣疫事務局(OIE)会合で主張しようとしてきたことだ。だが、OIEの基準変更案では取り上げられていない。

 (5)BSEリスクのカテゴリーの5分類から3分類への変更

 現在の5分類を3分類(無視できるリスク、管理されたリスク、不明なリスク)に減らす2005年のOIEの決定に合わせる。これは欧州議会も同意した。EUは、OIEがこの新たなシステムの下で各国を分類することを2007年5月まで待つが、もしそれまでにOIEがそうしなければ、自らこの作業に取りかかるという。

 これはわが国も早急に手をつけるべきことだ。現在はろくろく検査もしていないためにBSE汚染度が分からず、BSE対策の有効性も定かでない未発生国からの輸入は野放しの状態になっている。米国産牛肉の輸入条件の決定にも大混乱が生じた。

 関連情報
 欧州委、EUの狂牛病措置改変に向けてのロードマップを採択,05.7.18