カナダ食品検査局 マニトバの牛の狂牛病は非定型、米国型狂牛病?

農業情報研究所(WAPIC)

06.8.9

  カナダ食品検査局(CFIA)が8日、7月4日に狂牛病(BSE)が確認されたマニトバ州の16-17歳の交雑種肉用牛に関する調査を完了したと発表した。

 Report on the Investigation of the sixth case of Bovine Spongiform Encephalopathy (BSE) in Canada,8.8
 http://www.inspection.gc.ca/english/anima/heasan/disemala/bseesb/mb2006/6investe.shtml

 この発表で、このケースがヨーロッパや米国でこれまでに報告された比較的例の少ない狂牛病のタイプ(非定型BSE)であることが初めて明らかにされた。

 月齢に関しては、当初、最低でも15歳とされていたが、この牛は1992年1月に発生農場が購入したもので、農場の記録は1992年春に最初の子を産んだことを示唆しているから、出生年はその2年か3年前の1989年または1990年と考えられる(従って16歳か17歳)。

 このことからして、この牛が食べた飼料は1997年の飼料規制以前のもので、肉骨粉を含んでいたと見られる。しかし、その処方や肉骨粉の起源は不明で、これまでのケースで確認された飼料との関連の有無は決定できなかったという。

 CFIAによると、カナダでこれまでに確認された6ケースのうちの5ケースは世界中で発見された大多数のケースと類似なものだったが、このケースは非定型のものだった。この型の狂牛病は発見が難しく、主として高齢牛に感染する。世界中で記録された狂牛病のケースはおよそ20万になるが、非定型のケースは100例ほどしか知られていない。CFIAは、非定型BSEが発見されるようになったのは狂牛病サーベイランスの世界規模での強化の結果ではないかと推量している。

 フランスの科学者は最近、過去2年間に米国で発見された2つの狂牛病のケースは、フランス、スウェーデン、ポーランドで発見された少数の狂牛病のケースと同一の検査パターンを示したと発表した。とはいえ、彼は、米国のケースとヨーロッパのケースが関連しているかどうかは未だ不明と言い、フランス研究者が渡米して比較研究をすることになっていた(非定型BSEは高齢牛に感染する自然発生的BSEかーフランス研究者,06.6.1)。

 その結果は未だ出ていないようだが、米国・カナダには感染源がヨーロッパと異なり、潜伏期間が非常に長く、発見が難しい別の狂牛病が存在する可能性も考えられる。ウィスコンシン大学のリチャード・F・マーシュ博士等は、既に10年以上前に、アイダホとウィスコンシンで大流行したミンク脳症(ミンクの伝達性海綿状脳症)に罹ったミンクの脳を使って牛に海綿状脳症を発病させた。その病変は英国の狂牛病より広範囲にわたり、脳の上部や前部にも広がっていた。しかも、「感染してもほとんど症状が現れ」ず、「ただ動物を観察しているかぎりではすぐにはわからず、病気がかなり進行した段階になってようやく症状に気がつく」という病気だった(リチャード・ローズ 『死の病原体 プリオン』 草思社 1998年 255-256頁)。

 発見されつつある非定型BSEは、既に発見済みのこのよう病気に関連しているのかもしれない。そうだとすれば、米国で流行が見られるミンク脳症を起源とする狂牛病が発見されないままに(あるいは恐水症のような病気と間違えられて)蔓延している恐れもある。

 カナダにおける非定型BSEの発見は、改めてこのような懸念を掻き立てる。