カナダ 10例目狂牛病の疫学調査結果発表 ”交叉汚染”が有力感染源

農業情報研究所(WAPIC)

07.7.26

 カナダ食品検査局(CFIA)が25日、5月に確認された(参照:カナダ産牛11例目のBSE 交叉汚染で新たな感染が続く国が「管理されたリスク」国?,07.5.4)同国10例目(同国生まれでは11例目)の狂牛病(BSE)の牛の疫学調査結果を発表した。

 REPORT ON THE INVESTIGATION OF THE TENTH CASE OF BOVINE SPONGIFORM ENCEPHALOPATHY (BSE) IN CANADA,07.7.25
 http://www.inspection.gc.ca/english/anima/heasan/disemala/bseesb/bccb2007/10investe.shtml

 この牛は、97年のフィードバン実施から4年以上を経た2001年11月10日生まれのホルスタイン・雌であることが確定した。生まれてから死ぬまで同一農場で飼育されており、出産後起立歩行困難(ダウナー)になってと殺された死亡時の月齢は66ヵ月だった。

 生後1年の間この牛と一緒に育てられ、調査により同一飼料を消費したと分かった牛(飼料コーホート)は156頭で、内41頭がこの農場で、1頭が他の農場で生存している。残り115頭のうちの92頭は既にと畜されていること確認された(うち5頭は、以前のカナダ国家BSEサーベイランス・プログラムで検査されており、BSE陰性だった)。23頭は記録の不備のために追跡不能だった。

 感染源は、この農場で与えられた飼料と給餌方法の詳細な調査からして、雌子牛飼育用の配合飼料が最有力という。この配合飼料は反芻動物飼料と禁止物質(哺乳動物蛋白質)を含む飼料の両方を生産する施設で製造されたもので、交叉汚染防止の手続きが取られたいたことは確認できず、成分の受け入れ、あるいは輸送の途中で交叉汚染が起きた可能性が高い。禁止物質は4つのレンダリング施設から飼料製造施設に定期的に供給されており、これらレンダリング施設の一つは、以前のBSEのケースで確認された飼料供給者に禁止物質を供給していたことも分かったという。

 問題はこの調査結果をどう解釈するかだ。CFIAは、「このケースの発見はカナダのBSEリスクパラメーターのいかなる変更ももたらさない。発生場所も動物の年齢も以前のケースと整合しており、現在までのBSEサーベイランスの結果は、新たなケースも含め、カナダのBSEが極度に低レベルであることを反映している。本質的には、このケースは、1990年代と2000年代初期のカナダの飼料システムに存在した極度に低レベルのBSE感染性について既に知られていることを確認するものだ」と言う。

 しかし、このような楽観的言い分は、CFIAが「あり得るBSE感染性の99%以上がカナダの飼料システムに入るのを防ぐことでBSE根絶に向けた進歩を加速する」と言う今月12日から実施されたような強化飼料規制(カナダ BSE飼料規制強化=SRM完全廃棄の実施へ BSEリスクを米国に移転の結果に,07.7.12)を前提として、はじめて説得力を持つこともあり得る。

 ただ、日本の農水省がCFIAに見習うべきところはある。日本では同様な疫学調査は行われても、その結果が意味するところは分析されることなく、与えられた飼料等の一覧表が示されるだけだ。