米国産牛肉輸入条件 30ヵ月未満への緩和で食品安全委に諮問の報道

食品安全委の対応が見もの

農業情報研究所(WAPIC)

07.12.8

 12月7日に行われた日米次官級経済対話で、米国産牛肉輸入条件に関し、”米側の説明によると、日本側は月齢20カ月以下としている輸入条件を30カ月未満に緩和する方針を示した。会合後、都内の米大使館で記者会見したキーナム農務次官によると、日本側は「30カ月未満に緩和するよう内閣府食品安全委員会に諮問する」と述べた”(日本経済新聞 07.12.8経済面。または「牛肉輸入制限「30カ月未満」に緩和提起・日米次官級経済対話)ということだ。

 他方、日本側に関しては、町村信孝官房長官も、同日夕の記者会見で、”30カ月未満への緩和について「今年の春ごろから、ずっとそういう方針で米国と話し合ってきた”と明言”したそうである(朝日新聞 07.12.8 1面。または「米牛肉「30カ月」で交渉 輸入緩和巡り政府認める)。

 米国産牛肉の輸入条件については、今年6月と8月の2回にわたる”日米間の技術的会合”(米国産牛肉に関する日米間の技術的な会合の開催について 農水省 07625日、米国産牛肉に関する日米間の技術的な会合の開催について 農水省 0781)の結果を受けた日米共同の報告書に基づいて考案される輸入条件を食品安全委員会に諮り、最終的に決定すると説明されてきた。

 第2回会合終了後、当時の小林農林水産事務次官は、「第1回及び第2回会合の結果、米国のBSEリスク等を検討するために必要とされるデータは概ね揃ったと考えておりまして、現在、厚生労働省と農林水産省におきまして分析・評価作業を進めているところであります。この結果は、取りまとまり次第、また公表いたしたいと考えております」と述べている(小林農林水産事務次官記者会見概要 07年8月6日)。

 ところが、この報告書は未だに公表されていない。理由は米国側の作業の遅れということらしい。若林農林水産大臣は、「日本側は分析については概ね終了をして、日米共同でその評価を含めた報告書のとりまとめの作業を行っているわけであります」(若林農林水産大臣記者会見概要、07年11月16日)と言い、白須農林水産事務次官は、「現在私どもの評価というのは一応終わって、これをまさに米国側の方に玉を投げているわけでございまして、それを待って最終的な取りまとめということになるわけでございます」(白須農林水産事務次官記者会見概要 07年11月19日)。

 我々が知りたかったのは、日本が「米国側の方に玉を投げている」というその”玉”とはどんなものなのかということだった。それが一向に示されなかった。しかし、今回の官房長官発言で、この玉が、少なくとも輸入条件の一定の改変=緩和を目指すものであることは否定できなくなったようだ。

 米国は、飼料・飼料成分から特定危険部位を排除する飼料規制の強化を完全に見送った。これまでに12頭のBSE発生が確認されているカナダからの牛や牛等製品の輸入条件も大幅に緩和した(USDA Harmonizes Cattle Trade with Canada in Line with International Animal Health Standards,07.9.14)。米国のBSEリスクが、現在の輸入条件を決めたときに比べて減っていることを正当化する状況変化が認められないなか、食品安全委員会が輸入条件緩和をどう正当化するのか、ほんとうに見ものとなってきた。

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