経済的利益のためにのみ援用されるBSE・OIE基準 牛肉貿易をめぐる米欧の応酬

農業情報研究所(WAPIC)

08.1.10

 駐米EU大使がBSE(狂牛病)にかかわる米国の牛肉貿易ルールを”ダブル・スタンダード”と非難したそうである。

 「例えば、米国とEUは2005年、30ヵ月未満の牛の骨無し牛肉はいかなるBSEリスクも呈さないという世界的合意を作り上げるために国際獣疫事務局(OIE)で協力した。まさにこの合意が米国のアジアへの牛肉輸出の促進のために利用されている。しかし、2008年になっても、30ヵ月未満の牛のEU骨無し牛肉の米国への輸出は、恐らくはBSEのために、なお阻止されている。これはダブル・スタンダードだ」と言う。

 これに対し、米農務省報道官は、「EUはOIEのBSEステータスの指定を受けていない」とコメントしたそうである。

 EU Ambassador Accuses U.S. Of Double Standard On Beef Trade,Cattle Network,1.7

 お粗末な話だ。しかし、これは、”OIE基準は、安全のためではない、経済的利益のために利用されるだけのものにすぎない。経済的利益に反すれば無視して平然としていることもできる基準にすぎない”ということを如実に示す話として、敢えて取り上げた。

 米国やEUは、自国・地域の牛肉輸出拡大のために、”BSEステータスに関係なく”、従ってBSEリスク不明国でさえ、30ヵ月未満の牛の骨無し牛肉は安全だとする基準改訂を強行した。これは、日本や韓国に対する米国産牛肉の輸入再開や輸入条件緩和の要求を正当化するのに役立った。

 しかし、EUの米国に対する同様な要求は、自国が”管理されたリスク”国のOIEお墨付きを得たことで舞い上がってしまったのか、”BSEステータスと無関係”というこの規程の本質的部分さえ忘れてはねつける。日本の米国産牛肉輸入条件緩和(廃止)要求を正当化するためにも援用されるOIE基準に対する米国の認識とは、その程度のものだ。

 日本も、OIE基準には牛と牛製品の世界貿易を律する科学的根拠も、権威も、まったくないことを再認識する必要がある。 日本政府が早くも白旗を上げたが、まったくの論外だ(米国産牛肉輸入条件 30ヵ月未満への緩和で食品安全委に諮問の報道:食品安全委の対応が見もの,07.12.8)。