英国 BSE検査牛の最低月齢引き上げにゴーサイン 有効なサーベイランス実施が条件

農業情報研究所(WAPIC)

08.10.20

  英国食品規格庁理事会(FSA Board)が10月15日、BSE検査を義務付けられる英国牛の最低月齢を、現在と継続されるBSEサーベイランスの精査を条件に、30ヵ月から48ヵ月に引き上げる動きを支持することに合意した。

  FSA Board discusses proposals to reduce BSE testing,FSA(UK),08.10.15
  http://www.food.gov.uk/news/newsarchive/2008/oct/bsetesting

 EU立法(Regulation (EC) No 999/2001)は、緊急と殺に送られる牛・BSEの兆候が見られる牛・死亡牛のうちの24ヵ月齢以上のものすべて、人間消費用にと殺される30ヵ月齢以上のすべての牛のBSE検査をEU諸国に義務付けてきた。ところが2005年に発表されたロードマップ(欧州委、EUの狂牛病措置改変に向けてのロードマップを採択,05.7.18)に従い、07年1月の法改正で、BSE発生率が低いことを立証し、また厳格な飼料規制が少なくとも6年間実施されてきたことなどを条件に、EU諸国はBSEモニタリング計画を縮小することを許された。

  REGULATION (EC) No 1923/2006 OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL of 18 December 2006 amending Regulation (EC) No 999/2001 laying down rules for the prevention, control and eradication of certain transmissible spongiform encephalopathies 
  http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/site/en/oj/2006/l_404/l_40420061230en00010008.pdf

 これを受け、FSAは、BSE検査が義務付けられる人間消費用にと殺される牛の最低月齢を引き上げるべく、海綿状脳症諮問委員会(SEAC)にリスク評価を求めた。

 15日のFSA理事会の会合を前にSEACが発表した声明は次のように述べているという。 

 SEACは、健康なと殺牛と死亡牛がBSE検査を受けねばならない最低月齢を引き上げる結果として発見できなくなる可能性のある感染牛の数を推定するために使用されてきた数学モデルからの結果を考慮した。

 検査されねばならない健康なと殺牛の月齢を最大60ヵ月にまで引き上げることで生じる人間の健康リスクの増加分は非常に少ない。60ヵ月齢以上に引き上げることで見過ごされる英国の感染牛の数は年に1頭より少ないと推定される。欧州食品安全機関(EFSA)も、60ヵ月齢以上に引き上げた場合に見落とされる感染牛の数は、旧EU15ヵ国全体で年に2頭以下と推定している。

 ただし、これらのリスク評価は牛のBSE発生率が低いことを前提にしている。従って、有効なサーベイランスの実施が続くのでなければ、規則は修正すべきではない。

 サーベイランスはBSE発生率の変化を監視する唯一の手段である。またBSEやその他の新たなプリオン病を防ぐための措置の有効性を監視する唯一の手段でもある。牛と人間の感染を防ぐ措置が修正されるから、人間と動物の健康リスクを最小限にする残りの措置の有効性を確保するために、サーベイランスの継続はますます重要性を増す。

 Proposals to reduce BSE testing of cattle slaughtered for food,FSA(UK),08.10.15
  http://www.food.gov.uk/news/newsarchive/2008/oct/bsetests

  これを受けての理事会合意である。ハットンFSA委員長は、「理事会は48ヵ月での検査への動きを支持するが、サーベイランスに関するさらなる報告が出され、SEACの精査を通過するまでは実施されることを望まない」と言う。


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