イギリスでヘテロ遺伝子型(MV)の人にvCJD vCJD第二波の予兆?

農業情報研究所(WAPIC)

09.12.19

 イギリスで、プリオン蛋白質遺伝子のコドン 129 がメチオニン/バリンヘテロ接合体(MV)の人に変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)が発見された。ナショナル・プリオン・クリニックのジョン・コリンジ教授等が12月19日発行のランセット誌で明らかにしたもので、症状とMRIによるスキャンでvCJDに間違いないと確認された病気で今年1月に亡くなった30歳の男性の遺伝子型がMV型であったという。

 John Collinge et al.,Variant CJD in an individual heterozygous for PRNP codon 129,The Lancet, Volume 374, Issue 9707, Page 2128, 19 December 2009(free)
  http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(09)61568-3/fulltext?_eventId=login
 
or http://press.thelancet.com/vcjd.pdf

 狂牛病(BSE)の牛を食べて感染したと見られるvCJD患者は、1994年以来現在までに、イギリスで167人、世界全体で217人が確認されている(世界における新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)患者数)。そのすべての遺伝子型が、プリオン蛋白質遺伝子のコドン 129 がメチオニン/メチオニンホモ接合体(MM)である。

 この報告によると、どんな遺伝子型の人もvCJDのような自然発生的ではないプリオン病にかかり得るが、これまでの研究は、MV型の場合には潜伏期間が長くなることを示唆している(数十年)。

 報告は、イギリス人の「大部分」がBSEプリオンに暴露された可能性があるが、「他の遺伝子型の個人も、BSEプリオン暴露の後に同様にプリオン病を発する可能性があり、しかし潜伏期間が一層長いとすると、これらのコドン129の遺伝子型において、vCJDの診断基準に合致する、あるいは合致しない、さらなるケース(患者)が予想される」と言う。

 今後、vCJDの第二波がイギリスを襲う可能性があるということだ(必ずしも、症候が現れるとは限らないが)。この30歳の男性のvCJDは、第二波が始まったことを象徴するのであろうか。もしそうだとすると、MM型はイギリス人の3分の1ほどで、半分近くがMV型であることからして、第二波は第一波を上回る恐れもある。

 ただし、報告は、プリオン病感受性や潜伏期間は、他の(コドン129以外の)遺伝子座による影響も受ける、今までのvCJDのケースがこれらの座の遺伝子型の異常な結合を持つ可能性も残ると言う。