農業情報研究所狂牛病 >ニュース:2012年12月10日

ブラジルでBSE確認 ブラジル政府はBSE発生を否認 輸入禁止には法的反撃

 各紙が通りいっぺんに報じるように、農水省が12月8日、2010年12月に死亡したブラジルの繁殖牛(死亡時約13歳)にBSE(狂牛病)が確認されたという12月7日付けのブラジル政府からの国際獣疫事務局(OIE)宛て通報があったとして、「同国産牛肉製品等の輸入を停止」したと発表した。

 ブラジルにおけるBSEの発生について(報道発表資料)
 http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/douei/121208.html

 今から2年以上も前に死亡した牛のBSEがなぜ今頃確認されたのか等、さっぱり分からない話である。農水省は「当該事案について同国家畜衛生当局へ追加情報を求めました」という言う。しかしロイター通信が伝える次の情報以上に詳しい情報が得られるだろうか。

 Brazil government denies reports of 2010 mad cow case,Reuters,12.12.7
 http://www.reuters.com/article/2012/12/07/us-brazil-madcow-idUSBRE8B60GH20121207

 同通信が伝えるところでは、ブラジル当局者は、2010年12月にパラナ州で死亡したこの牛はBSEをだったのではなく、ただ13歳という歳で自然発生的に起きた遺伝子変異の後に現れる病気の原因と信じられるたんぱく質を持っていたにすぎないと言っている。検査の結果はこの牛がBSEを発症しておらず、それが原因で死亡したのでないことを示唆している。このたんぱく質の存在は、OIEが今月イギリスで行った検査で確認されたという。

 当局者は、草で育ったこの繁殖牛の正確な死因は確認していないが、敗血症かミネラル不足が死因と見ている。この牛が倒れるのを見た飼育者が当局に通報、その24時間後に死んだ。神経症ならこんなに早く死ぬことはないと言う。

 OIEの検査までになぜ2年余りも要したかについては、国が国内での徹底的検査の実施という確立された手順に拘ったからだという。要するに、国内検査では長い時間をかけてもBSEかどうか確認できなかった、OIEの検査で、ようやく病因たんぱく質の存在が確認されたということなのだろう。

 しかし、これはブラジルのBSEリスクレベルにどう影響するのだろうか。ブラジル当局者は、OIEはブラジルを「無視できるBSEリスク」国*とみなす立場を変えていないし、ブラジル牛肉の輸入国が輸入阻止の挙に出れば、法的反撃も辞さないと言う。輸入国は難しい判断を迫られる。

 *http://www.oie.int/en/animal-health-in-the-world/official-disease-status/bse/list-of-bse-risk-status/

 なお、EUの2005年の地理的BSEリスク評価は、ブラジルのBSEリスクレベルを、「国内飼育牛がBSE病原体に感染していることはありそうにないが、排除はできない」レベルと評価している。1991年以降、主として1991-95年にBSEリスク国から輸入された牛によって感染が広がった可能性は排除できないという(EU、新たな地理的BSEリスク評価 ブラジルがリスク国に 英国でブラジル牛肉即輸入禁止の要求,農業情報研究所,05.8.24)。最低限、特定危険部位(SRM)の排除は徹底すべきだろう。