農業情報研究所狂牛病 >ニュース:2013年2月18日

馬肉騒動の真っ只中 EU が魚養殖で肉骨粉使用を解禁へ 交叉汚染なしと保証できるのか

 EUの欧州委員会が2月14日、今年6月1日以後、豚と鶏の肉骨粉―加工動物蛋白―で養殖魚(水産動物)を育てることを許すと発表した。

 EUは狂牛病(BSE)伝達リスクを減らすために、1997年に肉骨粉を反芻動物飼料として使うことを禁止した。この禁止は、2001年には人間が消費するすべての動物に、従って水産動物にも拡張された。

 欧州委員会によると、水産動物についての禁止を解除する決定は非反芻動物間のBSE伝達のリスクは同一種リサイクル(共食い)でなければ無視できるという最近の科学的意見に基づくもので、養殖飼料として使われている魚資源の減少に鑑み、養殖産業の経済的持続性を長期にわたって改善するという。

 ただし、フランス農業食料相は、馬肉入り牛肉騒動の真っ只中でのこの決定は間が悪すぎると批判、決定は肉骨粉使用を義務づけるものではないから、フランスは独自に責任ある行動を取ると言う。

 肉骨粉禁止を反芻動物以外のすべての動物に拡張したのは、何よりも、反芻動物以外の動物に使用される肉骨粉が製造・加工・貯蔵・輸送・消費の過程で反芻動物飼料に混入するリスク(交叉汚染のリスク)が排除できなかったからである。そういうリスクは、今や完全に排除されたのだろうか。これにかかわる諸産業は交叉汚染は起こり得ないと保証できるのか。

 馬肉騒動は、そんな保証はあり得ないと保証していないだろうか。検査体制の強化で、ヨーロッパ中で販売される牛肉製品から次々と馬肉が検出されている。しかし、すべての肉・牛肉製品の検査など不可能であるのと同様、すべての養殖飼料の検査も不可能だ。

 BSEが根絶されたというならば、こんなことは問題にならない。しかし、EU域内でも、域外でも、BSEは減ったとしても根絶されていない(OIE:Number of Cases reported: In the UK  Worldwide (excluding UK))。肉骨粉は世界中を流通する。

 針の一穴を通り抜けた感染性動物蛋白質が、再びBSE大騒動を引き起こすかもしれない。「BSEは針の一穴からでも洪水のごとく押し寄せるというのは、ヨーロッパ自身が学んだ教訓ではなかったのか」(→欧州委、EUの狂牛病措置改変に向けてのロードマップを採択,05.7.18)。オランダ、フランスからの牛肉輸入解禁を決めた日本も、安閑とはしてはいられない。

  Les farines animales à nouveau autorisées pour nourrir les poissons(AFP),Agrisdalon,2.14
 
Le feu vert de Bruxelles « tombe mal » selon Guillaume Garot(AFP),Agrisalon,2.15
 
Bruxelles autorise le retour des farines animales,Le Monde,2.15
  Les farines animales rendent l'Europe folle(Editorial),Le Monde,2.16
  Paris milite pour un label "sans farine animale",Le Monde,2.18