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EU:BSE地理的リスク評価の現況

農業情報研究所(WAPIC)

03.4.18

 4月15日、EUの科学運営委員会(SSC)が新たに11ヵ国のBSE地理的リスク評価(GBR)の結果を発表した。GBRは、特定国・地域のBSE発生または潜在のリスクの大きさをランク付けるもので、EU諸国だけでなく、域外諸国から輸入される動物や動物産品を対象とする規制措置決定(リスク管理)の基礎をなす。2001年までに51ヵ国の評価を終えていた。

 ところが、2001年に採択され、BSEリスク管理を飛躍的に強化した「一定の伝達性海綿状脳症(TSE)の予防・コントロール・根絶のためのルールを定める欧州議会及び理事会規則(EC)No.999/2001」は、GBRについても評価方法を改善、ランク付けも5段階(従来は4段階)のランク付けを規定した(注)。EU諸国やEUへの関連品の輸出を希望する国や地域はこの評価を受けねばならず、規則は、2001年7月1日から6ヵ月以内に評価を申請しなかった国や地域はリスクが最高レベルのXにランク付けるとしている。

 SSCはこの再評価の作業を急いできたが、評価を終えたのは、15日に発表された11か国を加えて、未だ28ヵ国にとどまっている。再評価が完了していない国については、以前の評価が暫定的に適用され、各国のランク付けは次のようになる。

ランク

国名

T

(新評価)アルゼンチン、バヌアツ、ブラジル、カレドニア、チリ、アイスランド、ニュージーランド、シンガポール、ウルグアイ
(旧評価)オーストラリア、ボツワナ、エル・サルバドル、ナミビア、ニカラグア、ノルウェー、パナマ、パラグアイ、スワジランド

U

(新評価)コス・タリカ
(旧評価)カナダ、コロンビア、インド、ケニヤ、モーリシャス、ナイジェリア、パキスタン、スウェーデン、米国

V

(新評価)アンドラ、オーストリア、ベラルーシ、ブルガリア、クロアチア、キプロス、エストニア、フィンランド、
旧ユーゴスラビア・マケドニア共和国、ギリシャ、イスラエル、ラトビア、リトアニア、マルタ、サン・マリノ、スロベニア、トルコ
(旧評価)アルバニア、ベルギー、チェコ、デンマーク、フランス、ドイツ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、日本(評価中断)、
ルクセンブルグ、オランダ、ポーランド、ルーマニア、スロバキア、スペイン

W

(旧評価)ポルトガル、イギリス

X

 

 このような作業の遅れは、BSEリスク管理の改新の遅れにつながる。欧州委員会は、3月5日、欧州議会と閣僚理事会に対し、2001年7月から実施に入り、今年6月に期限切れを迎えるはずであった暫定措置ーGBRレベルT以外の国への特定危険部位の食物連鎖からの排除の義務付け、一定の屠殺方法と機械的回収肉生産のための反芻動物の骨の利用の禁止、食用農用家畜への動物蛋白質給餌の禁止、イギリスとポルトガルに対する輸出規制などーの2005年7月1日までの延長適用を提案、考えてきた6月末までの永久措置の実施は不可能になった。

(注)新たな評価は次のような基準に基づいて行なわれる。

(a)肉骨粉か反芻動物由来の油粕の牛による消費、TSEに汚染された可能性のある肉骨粉か油粕または肉骨粉か油粕を含む飼料の輸入、TSEに汚染された可能性のある動物または卵子・胚の輸入、国または地域の動物TSEに関連した疫学的ステータス、国または地域における牛・羊・山羊の個体群の構成に関する知識の程度、動物廃棄物源・そのような廃棄物の処理・飼料生産方法などのすべてのBSE発生要因を確認するリスク分析の成果、

(b)獣医、繁殖業者・牛の輸送・取引・屠殺を行なう者に成牛の神経症すべての報告を求める教育プログラム、

(c)BSEの症状を示すすべての牛の義務的な報告と検査、

(d)適切な(EU規則に定められたような、または国際基準に従う)継続サーベイランスとモニタリングのシステム。実行された検査の数の報告とその結果の最低7年間の保存、

(e)(d)のサーベイランスで収集された脳髄またはその他の組織のサンプルの承認された試験所での検査。

 これらの基準によるリスク分析、確認されたリスクの管理がどこまで行なわれているか、その実施期間(最低7年間)、BSE発生状況(確認数)などに応じて、GBRはT(BSEは存在しない)、U(BSEが暫定的に存在しないか、国・地域産動物のBSEのケースが報告されていない)、V(BSEが暫定的に存在しないか、国・地域産動物のBSEの最低1ケースが報告されている)、W(低レベルのBSE発生がある)、X(高レベルのBSE発生がある)の5段階で評価される。