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殺虫剤・ペルメトリンがパーキンソン病と関連の恐れ

農業情報研究所WAPIC)

03.4.9

 殺虫剤・ペルメトリンがパーキンソン病と関連している可能性が発見された。3月25日付のBBC News(Pesticide link to Parkinson's)が伝えている。

 報道によれば、Virginia Pplytechnic Instituteの研究チームが様々なレベルのペルメトリンに曝されたマウスの脳内の重要化学物質のレベルを研究した。その結果、この殺虫剤がドーパミンと呼ばれる神経伝達物質のレベルの低下を刺激することが分かった。筋肉硬直・足を引きずる歩行・周期的震えなどのパーキンソンの症候は脳内でのドーパミン生産の減少に関連づけられてきた。また、ペルメトリンへの暴露はアルファ・シニクレイアンと呼ばれる蛋白質の生産増加にも結びついていた。この蛋白質はパーキンソン患者の脳内に見られるLewy小体の中心的構成要素である。低レベルの暴露の方が高レベルの暴露よりも急激な影響があった。しかし、研究者は、これは、高レベルが慣れに時間がかかり、従って反応が遅れる脳内のデリケートなシステムを単に圧倒するからだと考えている

 研究者は、脳への影響を生み出すためには、マウスを殺すのに必要な量の千分の一以下の小量で十分だと言う。しかし、ペルメトリンに曝されたマウスはパーキンソン類似の症候を示しはしたが、病気の全開には至らなかった。現在、ペルメトリンと広く使われている別の農薬・クロロピリフォスへの長期の暴露の影響の研究を計画している。研究結果は米国化学学会の会合で発表された。

 ペルメトリンは、米国環境保護庁(EPA)により発癌の恐れがある物質に分類されている。また、EUでは、現在進行中の農薬見直し計画の下で、段階的に廃止されることになっている。

 『農薬毒性の辞典・改訂版』(植村振作ほか、三省堂、2002年)によれば、ペルメトリンは住友化学が開発した薬剤で、家庭用殺虫剤としてまず発売されたもので、原体生産は97年123トンであったが、98年、99年は数量不明、99年の単剤生産量は544トンであるという。同書は、日本の消費者団体が厚生省に対する行政訴訟で発癌性の疑いが濃いこの農薬の残留基準(0.05-50ppm)を検出限界以下にするように求めたが、請求は却下されたと述べている。また、95年の反農薬東京グループの電車内消毒調査でJR東日本、東急、西部などでこの殺虫剤を含む薬剤が使用されているこのが分かり、市民団体が使用しないように要望しているともいう。